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2006年07月17日

●随筆「小さな星座あれこれ」

“台風一過”という言葉がある。子供のころは、一年に一度か二度、必ず言葉どおりの快晴、あるいは満天の星空を見ることができたような気がするが、温暖化の影響か、最近は、台風が行き過ぎてもカラッとした晴天に恵まれることが少なくなってきたようだ。
 そんなことを思っていた矢先に通過した台風6号は、岐阜県西濃地方に大雨をもたらしたが、台風が去ったあとには、久しぶりに言葉どおりの晴天をももたらしてくれた。
 その晩は、娘と二人、今年で一番だろうと思われる星空を庭先から見上げ、感嘆の声をあげていたのだが、さそり座やはくちょう座などの大きくメジャーな星座のなかにあって、ふだんはあまり気にとめることのない小さな星座にしきりに目を引かれたのが、不思議と言えば不思議であった。
 透明度が極度に良かったため、と言ってしまえばそれまでだが、小さな星座のみならず、星座の形、というか星の配列がプラネタリウムで星座絵を重ねたような鮮やかさで目に映り、いきおい、小さな星座
にも目を引かれたというほうが正しいかもしれない。あるいは単に透明度が良かったという理由だけでなく、台風がもたらした湿潤な空気がディフュージョンフィルターのような作用を果たし、輝星をことさらに目立たせる役割を担っていたのだろう。
 その晩、とりわけ目を引いたのは、「いるか座」であった。ひし形の胴体に尻尾の星がちょこんとついたこの小さな星座は、どこか南国を連想させる。この星座をみるたび、澄んだ南の海を元気よく泳ぎまわるいるかの姿を、私は思い浮かべるのだ。

M57b.jpg

 同じように南国のイメージを感じるのが、有名ではあるけれど、星座としては小さな「こと座」である。おりひめ星のベガや、ドーナツ星雲M57があるために、どうしても星座そのものよりも個々の天体に目が向いてしまいがちだが、星の配列としても、きれいに整った星座だ。「こと座」は赤緯が高いために、夏の星座とはいいながら実のところほとんど1年中見ることができるのだが、春浅い明け方、霜柱を踏みながらこの星座を見るときでも、私はやはり南国をイメージしてしまう。
 反対に、見える季節そのままに寒い印象の小さな星座が「うさぎ座」だ。きらびやかなオリオン座の下にうずくまっているために、あまり目を向けられることがないのだが、よく見るとなかなか整った姿をした星座であり、一度、星の配列を覚えてしまえば、冬空にうさぎの姿を容易に描くことができる。うさぎは暑さを苦手とする動物だから、凍てつく冬の夜空が似合う星座ということができよう。そういえば、この星座にある球状星団M79は、寒さに丸まったように小さな姿をしている。
 形がわかりやすい小さな星座の代表格といえば「かんむり座」があげられよう。明るいアークツールスのすぐ近くにありながら、一度見ればまず忘れることのない美しい半円形にまとまっている。α星の名はアルフェッカ、文字通り“欠けた皿”という意味だ。
「かんむり座」と良く似た星座が、夏の南天低くに見えている。「南のかんむり座」である。さそり座やいて座といった超有名な星座に隠れてほとんど注目されることもないが、本家?の「かんむり座」と同じく半円形の姿が美しい。
 ほとんど注目されないといえば、春の星座に「こじし座」がある。有名なしし座のすぐ北にあるのだが、明るい星がないために、形をたどろうにも、街中ではそのエリアに星の姿を探すことすら難しい星座である。
 そんなマイナーな「こじし座」だが、だいぶ以前、ふとした拍子に、本家本元のしし座とそっくりな姿を夜空にたどることができてびっくりしたことがある。もっともそれはそのときだけで、その後は何度目を凝らしてみても形をたどることができずにいるのだが、今から思えば、あの晩も、かすかに海の香りを大気に感じるような台風一過の快晴だったような気がする。
 春の星座といえば、「かみのけ座」もあまり目立たない。面積的にはさほど小さくはないのだが、暗い星が朦朧と集まった姿は、やはり都会で見ることは困難だ。それでも、となりの「かに座」と並んで、春のうすぼんやりと霞んだ夜空に似つかわしい星座ではある。
 思いつくまま、季節の夜空に見える小さな星座を取り上げてきたが、ここまで書いてきて秋の星座がないことに気がついた。それでは、と思い、秋の星座を思い浮かべてみたのだが、こと、小さな星座となる
と、あまり印象に浮かんでこない。
 考えているうち、秋の星座のどれもが線の細い印象であることに気がついた。カシオペヤ座やペガスス座をはじめ、それこそギリシャ神話のメインキャラクターばかりなのだが、春のさそり座や、冬のオリオン座、あるいは春のしし座などに比べると、奇妙にひっそりとした印象なのだ。
 これは多分に、秋の夜空に明るい星が少ないこと、輝く夏が過ぎ、冬に向かう、どちらかといえば寂しい季節であることなどがその理由なのだろう。秋の星座は、有名な星座も小さな星座も、どれもつつま
しくこじんまりしているように感じられる。とりたてて取り上げるべき小さな星座が思い浮かばないのも、多分にそんな理由によるものなのだろう。
 そして、秋の星座には、そんなつつましさがよく似合うような気がする。

写真:こと座のリング星雲M57(60cm反射)
「STAR RIGHT PARTY通信Vol.20(2002年)」掲載

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コメント

こんばんは、
藤橋までいなべ市から1時間40分でした
そこには、そんな空があるんですね
いいお話伺いました。また使わせてもらいます

生川さん、ありがとうございます。
いなべ市にご在住ですか。
いなべ市のあたりも結構、星は見えますよね。
以前に何度か、いなべ市で観測したことがあります。流星群の観測だったかな。
また、もう少し先の大安町では、船越さんと一緒にペルセウス座流星群を観測したこともあります。
藤橋も以前に比べれば光害が増えましたが、それでも透明度の良い日にはなかなかの星空が見えますヨ。ただ、天候が悪いことが難点です。

こんばんは、
いまは大安町も合併していなべ市と
なっています。その大安町に住んでいます。
大安町のどの辺で観測されましたでしょうか

大安町の国道沿いの空地でした。近くに、なんとか渓谷とかいう表示があったなあ。
ごめんなさい。正確な地番や場所はよくわかりません。とにかく船越さんと二人で、朝まで観測しました。最初は、上石津へ行ったのですが、あまり良い場所がなく、大安町まで走ったこと、そして一晩中、快晴だったことを覚えています。

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