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2006年08月07日

●70年代の記憶「1978年月食観望会観測記」

昔昔の観測日誌から抜書きしました。
東大和天文同好会が近くの小学校校庭で行なった月食観測の様子です。
東大和天文同好会会員のみならず、今と違って趣味としての天文が盛んだった当時、気合が入っていた雰囲気を味わっていただければ・・・。
それにしても当時は若かったなあ。高校生の頃でした。

1978年3月24日(金)

21時、中山氏、来訪。続いて、清水、山崎、井川氏と、続々、会員がやって来る。
そう、今夜は月食観測会なのだ。
私と清水、中山氏は、望遠鏡運搬を手伝うため、小堤氏の家へ赴く。小堤氏は、あのアストロLN-4E
(10cm反射赤道儀・ピラー脚)を持ってくるのだ。
私は鏡筒を、中山氏はウェイト他を、清水、小堤両氏はピラーとマウントを、それぞれ持ち、時間を気にしながら観測地の東大和市立第5小学校へと歩く。
と、上仲原公園の横で、タカハシの5センチを操り、月を見ている女性がいる。
「おお、なかなか意気盛んなことよのう」と感心しつつ先を急ぐ。後で、この女性ともう一度会うことになろうとは、このときは夢にも思っていなかった。
ようやく私の家に到着すると、すごい! 望遠鏡とカメラの展示会である。
ちなみに今回の参加者、松本、清水、番園、中山、長谷川、井川、大滝、山崎、早田、小堤、奥田、
五島、石津、井手、中嶋、佐々木、宮寺、中川、尾崎、大森、清水氏の弟さん、小堤氏の弟さん、高橋という中学一年生、プラスアルファの丸山、奥村、それに知らない子の計27名!
望遠鏡は、私の6㎝屈赤・6センチ屈経、清水氏の8.5cm反経・6.8cm屈赤、井川氏の8㎝屈赤、奥田氏
10cm反赤、大滝氏6.8cm屈赤、早田6㎝屈赤、山崎氏7.6cm屈赤、長谷川氏10cm反赤、番園氏6㎝屈赤と10台以上が揃う。まさに中山氏の言うとおり「HASの総力を結集した」観測会なのである。
5小の観測地へ、それぞれ機材を抱えてぞろぞろと赴く。
望遠鏡をセッティングすると、しばらくは皆、機材の調整にいそしむ。その後、月面課長の中山氏による最終ミーティング。氏のどら声が、広い校庭にガンガン響く。
反影食開始は22時28分。食分と色のスケッチ担当の早田、尾崎、大滝、中川、大森氏らは観測体制につく。時刻測定の五島、奥田両氏も、それぞれ望遠鏡を覗きこむ。
反影食の始まりは予報より早くとらえる。食の進行につれ、次第に多くのメンバーがそれに気づき始める。
「たしかに欠けてるよ!」
「やったぜ!」
歓声が湧き起こる。
あとはシャッターの下りる音と鉛筆が記録用紙を走るさらさらという音が聞こえるのみ。
中山氏が怒鳴る。
「あと12分で本影だ。観測態勢に入って!」
本影食が始まった。カシャッ、カシャッ。あちこちでシャッターの音が響く。
食の進行につれて星の数が増えてくる。
傍らでは中山氏が多重露出を行なっているが、うまくいかないらしい。
「会長、カメラが動いてしまって失敗かも」
とのこと。
そこへ清水氏が、
「おいこの食分だと、直焦点で露出はどの位だ?」
と尋ねてくる。氏は星食班だが、現象が始まるまで、600mmの直焦点で撮影をしているのだろう。
ただ氏は、今回、カメラを持参していない。どうやら奥村、高橋両君のカメラを取り上げて撮影をしているらしい。
「だいたい30分の1秒!」
私に代わって井川氏が答える。
月はかなり赤みを増している。
中山氏がふたたび怒鳴る。
「色の変化に注意しろよ! 今回は3年前よりかなり赤くなるはずだ」
今夜の月食は、本影中心近くを通るため、それだけ月が暗く、赤くなるはずなのである。
「あと10分で皆既!」
中山氏の声が響く。
もう月は赤黒い円盤となり、欠け残っている縁だけが白く輝いている。
五島、奥田両氏は、時刻の測定である。
「そろそろかな」
「もう少しでしょう」
両氏の話し声が聞こえる。
私は、46倍の丸い視野を覗きこむ。かすかに残った明るさが、新雪のように白い。
ひとしきりシャッター音が響いた後、「皆既になりました」という声が聞こえた。
光を失った月の周囲で、星が急に輝きを増す。
清水氏らは星食の観測である。
「まだ?」
「隠れた!」
声の周辺で拍手が湧き起こる。
と、「火球!」
誰かが叫んだ。
私はちょうどノートに目を落としたところで見られなかったが、-4.5等、中山氏によれば音がした、とのこと。
皆既は長い。私と清水氏は、ふと思い出して先ほどの女性を探しに行く。
女性はすぐに見つかった。その傍らにいるのは・・・。
「ありゃりゃ! 芝木さんじゃないですか!」
HAS創立期の相談役とも言うべき大先輩、当時は珍しかったアスコ20cm反経を所有されていた芝木さんであった。
芝木さんは、仲間数名と月食を観測していたとのこと。
しばらく話すうち、女性の一人が「えんぺい観測グループ」の会員ということが判明した。
星食班の清水氏、観測結果を尋ねると、HASのデータとほとんど同じということがわかり、ほっとした様子。
ふたたび観測地へ戻る。
「あと10分で皆既終了!」
中山氏が怒鳴る。
それぞれのプログラムを坦々とこなすうち、みるみる月が明るさを増してくる。
完全に復円したのは27時12分。記念写真を撮影した後は、三々五々、望遠鏡を担いで帰路に着く。
最後に残ったのは、私と井川氏。
広い校庭を春とは思えぬ寒風が吹き抜ける。ついさっきまで、この場所に30名近い人間と20台近い望遠鏡が並んでいたとはとても信じられない静けさである。
祭りの後の寂しさを感じながら、井川氏と最後の片付け。西の空には傾いた月が、何事もなかったかのように白い光を投げている。
満足感と寂寥感を感じながら、井川氏と二人、ひどく重たく感じられる望遠鏡を担いで帰路につく。
南に低く、春のさそりが正中している。

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