2006年10月01日

●ギターが弾きたい宿直の晩

今夜は宿直です。平日の宿直では、遅くまで仕事をしている人がいたり電話があったりと何かとせわしないのですが、日曜日はほとんど電話も来ず、もちろん仕事をしている職員もおらず静かです。
今は22時をちょっと回ったところ。小川洋子さんのエッセイを読みながら、ビデオで伊勢正三さん(元かぐや姫・風の正やんですね)の演奏を見て(聴いて?)います。
ブラウン管の中の正やんは、若い頃と何も変わらず(ギターだけはめちゃくちゃ上手くなっていましたが)、生き生きと演奏しているその姿を見ていると、ああ、俺もまたギターが弾きたいなあという気持ちがふつふつと沸き上がってきます。

guitar2.jpg

星と音楽、そして文学、これが私という人間を構成している大部分の要素です。いや、私という人間を構成しているさまざまな要素を主観的にも客観的にも表現するための方法論という方が適切かもしれません。
時にはバンドを組んだり、時には拙い曲を作ったりと、いつも私の内部にあるものを表し、そのネックを握るだけで心を鎮めてくれたのが一本のギターでした。
ギターにあまり触らなくなったのは忙しさももちろんですが、いっしょに演奏をしてくれる友人が近くにいないことも大きな要因です。東京にいる頃は、何かあればいっしょにセッションをしてくれる友がいました。星空の下で、仲間うちのパーティーの席上で、心の奥底まで響くような弦の音をそうした友人と楽しんだものですが、こちらへ引っ越してからは残念ながらそうした音楽仲間とは巡り会えず、次第にギターから遠ざかっていたのです。
今度の休みには久しぶりに弦を張り替えてギターを弾いてみようかなと思いながら、正やんのビデオを見ています。

写真:東栄町 スター・フォーレスト御園にて

2006年10月03日

●小説「ミイラのある地下室」

旧家の当主である友人に案内されて、その家の地下室に降りた私を迎えたものは、先祖代々からの無数のミイラだった。旧家を辞そうとした私を見送る陰惨な憎悪をこめた家政婦の眼差し・・・。

天文にはぜんぜん関係ありませんが、山の中で星を見ていて怖いことはないの? というコメントを受けて、怪奇小説を公開。
真夜中、部屋を暗くしてお読みください。

続きを読む "小説「ミイラのある地下室」"

2006年10月07日

●完成に近づいた西美濃天文台

10月7日の天文台です。
足場が取り払われ、白亜の外観が現れました。

nisimino2.jpg

メインドームの横には、ステンレスパイプを加工して制作された簡天儀が見えています。
(簡天儀は昨日設置されました)
来週には、簡天儀のとなりに太陽望遠鏡用ドームが設置される予定となっています。
また、主望遠鏡も近々搬入されることとなっており、リニューアルにあわせて望遠鏡の外観も変化しています。
内装工事も順調に進んでおり、バリアフリーにも充分な配慮がなされています。
来月には竣工式、そしてファーストライトを迎えることになります。

2006年10月10日

●月の出前にちょこっと観測

東と西の低空が見える観測地をいつも探しています。越美山地は、西に1,000メートル級の山が連なっているため西の視界が悪いのは仕方ないのですが、東は岐阜から名古屋の街あかりがあるために、それなりに山奥に入らないと光害を避けられず、といってあまり山奥に入ってしまうとやはり連なる山々のために低空が見られないというジレンマを常に抱える場所なのです。

ということで、昨日は旧春日村の上ヶ流(かみがれ)という場所に初めて観測に行きました。
春日茶の産地ということで、周囲の山は山頂近くまで一面の茶畑。西の視界がけっこう良いのではと期待していたのですが、やはり10度以下の低空は山に隠されて見えません。
月の出も迫っているので、とにかく薄明が終わらないうちから15cm双眼鏡で観測開始。
さそり、へびつかい、いて付近を流しました。このあたりはやたらと球状星団が多い天域で、星図と照合しながら1時間足らずの間に30個近い星団を確認。
視野内を横切る流星がいつもよりも多かったのも特筆すべきことでした。昨日がジャコビニ群の極大でしたから、あるいはその名残があったのかもしれません。

途中、すぐ近くで動物の鳴き声というか唸り声を聞いたため、手を叩いたりラジオをつけたりしてこちらの存在を教えてやると、どこへともなく消えていきました。山奥での観測では、時に野生動物と遭遇することがあるのです。

北西の視界が良ければ7等になっているC/2006M4を見たかったのですが、残念ながら北西は高い山
に遮られて見えず、日を改めて観測することにしました。

観測を終了してアイピースから目を離すと、月齢17の月が高く昇った空は青く染まり、天の川も見えなくなっていました。
西の低空が見える場所探しは、まだまだ続きそうです。

2006年10月13日

●望遠鏡クリアモデル展示

天体望遠鏡というものは、大人にも子どもにも人気があるものです。いかにも未知の世界を覗けそうなサイエンティフィックな外観が宇宙への夢を誘うのでしょう。
天体望遠鏡には、レンズを使った屈折式と鏡を使った反射式があり、西美濃プラネタリウムには、鏡筒を透明アクリルとしたそれぞれのクリアモデルが展示してあります。
先日、生川さんからこのクリアモデルについてご質問がありましたので、展示について簡単にご紹介します。

ter-tenji.jpg

屈折式は口径68mm、焦点距離600mm、反射式は口径100mm、焦点距離600mmです。このスペックを見てベースとなったモデルがわかる方はなかなかの通ですね。
アクリルケースの中に屈折・反射2本の筒が並べて置かれており、透明な鏡筒を通して光学系の仕組みが一目でわかる他、それぞれ接眼部から覗けるようになっています。
覗くと、窓に張ってある月の写真が見えるのですが、生川さんのご質問は、あの距離でどうやってピントを合わせているのかというものでした。
実は、特に変わった工夫はありません。屈折式はK40mm、反射式はK20mmの接眼レンズがついており、ドローチューブの繰り出しで足らない分は、ごく普通の延長筒で対応しています。屈折式にK40mmを使用しているのは、月面写真の全景を見られるようにしてあるためで、それより長い接眼レンズを使用してもピントは出るようになっています。
もう10年近く展示していますが、特に問題はなく、メンテナンスとしては、正しく月面写真を視野内に入れなすこと(ときどき台座ごとずらしてしまうお客さんがいるので・・・)、ピントをチェックすること、ケースの中に侵入した虫を掃除することぐらいです。
1階にある望遠鏡展示とあわせて、もっとも人気のある展示のひとつとなっています。

2006年10月14日

●主望遠鏡が搬入・設置されました

建物はほぼ完成に近づいた西美濃天文台に、主望遠鏡の搬入・調整が行なわれています。
クレーンで吊り上げた望遠鏡を、スリットからドーム内に下ろし仮固定。一昨夜と昨夜をかけて、光軸調整、極軸調整作業を行いました。

pole setting1.jpg

一昨夜、私は宿直のために立ち会えず、今回の天文台移転作業のチーフである小栗さんが一晩中立会いました。昨夜は私も立会い、比較的透明な空の下、極軸調整作業を見守りました。
60センチという大きな望遠鏡のため、極軸望遠鏡で覗いてハイおしまい、というわけにはもちろんいきません。おおまかに合わせたあとで、各方角の星を追尾しながらズレを少しずつ調整します。
23時近くまでかかって調整を行い、終了と同時に全天が曇りました。うまい具合に、調整作業の間は晴れていたことになります。
昼間は暑かったのですが、さすがに夜は冷え込み、秋の星座が高く昇っているのを見上げて、季節の移ろいと、わずか半年ほどでよくぞ望遠鏡設置までこぎつけたなあと感慨深いものを感じた昨夜の調整作業でした。
旧天文台に比べてドームが大きくなったために、観測室内は非常に広く感じられます。

2006年10月15日

●C/2006M4(SWAN)が明るい!

C/2006M4(SWAN)が夕方の西空で明るくなっています。
一昨日は揖斐川町鶴見で、今日は同東横山で観測してきました。

2006.10.13 18h20m JST m1=5.9 m2=- Dia=7′ DC=6 Tail=? 15cm×25双眼鏡
2006.10.15 18h30m JST m1=6.1 m2=- Dia=6′ DC=6 Tail=5′ 15cm×25双眼鏡

りょうけん座からうしかい座へと移動しており、北斗七星とアークトゥールスの中間で
探しやすい位置です。
非常に明るく、近傍にあるM3と明るさもイメージも同じようでした。尾がほとんど眼視
では見えず、中央集光が顕著なので、彗星というより球状星団といった感じです。
写真にとれば淡い尾が写りそうですので、今度晴れた日があれば撮影しようと思ってい
ます。
小さな双眼鏡でも簡単に見えますので、ぜひ皆さん、ご覧下さい。

●外観はほぼ完成・・・西美濃天文台

ほぼ完成した西美濃天文台の外観です。
以前にお見せした写真では、主望遠鏡のドームと簡天儀のみでしたが、今回は太陽望遠鏡のドームも写っています。

obsgaikan1.jpg

主望遠鏡のドームからは、すぐに隣接したテラスに出ることができる構造となっており、一昨日、極軸あわせの際には、空の状態を見るために何度も出入りしましたが、周囲の光源がちょうど主望遠鏡のドームとテラス周囲の柵、というか壁で隠れるために、ほとんど光害も気にならず、実にいい感じでした。テラスに小型望遠鏡を出して60センチと交互にさまざまな天体を見比べるのも楽しそうです。
内装にもさまざまな工夫が凝らされていますが、そのあたりはオープン後のお楽しみ、かな。

2006年10月17日

●久々に覗いた60センチ

今夜は、60センチ望遠鏡の動作テストと星像テストを行ないました。
当初は、SWAN彗星を撮影しようと小栗さんと準備をしていたのですが、彗星を写野にとらえた頃から雲が広がり始め、準備が完了したときには西空はすっかり曇ってしまいました。

telescope1.jpg

導入精度のチェック、星像のチェック等を行い、いくつか問題はありましたが、視野の半分近く広がって見えるM27など、久々に覗く60センチの像はさすがに迫力がありました。
本当に久しぶりに海王星も見ました。ただ、薄雲の中で、独特の青緑色があまり鮮やかには見えなかったのが残念でした。

望遠鏡の色が若干変わったのと台座が高くなったのが、写真からわかるでしょうか。



2006年10月20日

●二日続いての出張観望会

18日、19日と連続で出張観望会でした。
18日は関ヶ原青少年自然の家で小学校5年生を対象に、望遠鏡4台で、スワン彗星、ベガ、アルビレオ、M31等を観望、透明度は悪いながらも晴れていましたので、子どもも先生も喜んでくれました。
19日は、旧谷汲村の「ラーニングアーバー横蔵」を会場として、谷汲小と長瀬小児童40名プラス親さん、計70名弱を対象に行いましたが、折悪しく観望会の時間帯だけ雲が出て、望遠鏡3台を並べましたが、満足な観望はできませんでした。かろうじてベガ、アルビレオ、M31、h&χ、M27などを見たものの、すぐに雲がかかってしまい、他の天体を導入するとそこも曇り・・・という具合で、参加者にとっても私たちにとっても不満の残る観望会でした。

M27a.jpg

はじめから雨や曇りであれば、室内でお話しをすれば良いので楽なのですが、雲の去来が激しかったり薄雲があったりする晩は困ります。列を作って望遠鏡を覗くのを待ち、接眼レンズに目を当てたとたんに曇ってしまった、というシチュエーションに遭遇してしまった子どもは本当にかわいそうです。
また、雲の切れ間を見ながら、次はどの天体を導入しようかと思案している私たちのかたわらで、「まだ見えないの? 早くしてよ」的な態度を取る人もいますが、これはちょっと頭にきます。
動きの速い雲の切れ間を指さして「あそこが晴れているから望遠鏡を早く向けて」とせっつく人も困ります。こういった困ったちゃんは、子どもには案外少なく、どちらかといえば大人の方にその割合が多いようです。

まさに悲喜こもごもの観望会ですが、子どもたちにとって、夜の闇の中で、土や木や風の匂いを全身で受け止めながら星空を見上げた記憶というものは長く思い出に残るようです。
星は手の届かない高みに光っていますが、夜の大気を透して見上げるその輝きは、やはり身近でかけがいのない自然の一部なのです。

写真:M27(西美濃天文台の20cm屈折にて撮影)

2006年10月25日

●4P Faye彗星観測報告

今日、仕事の帰りに藤橋で4P/Fayeを見てきました。

2006.10.25 20h30m JST m1=9.8 m2=- Dia=3′ DC=5 Tail=3′ 15cm×25双眼鏡

中央集光が比較的強く、一回見つかれば見やすいのですが、それなりに小さく暗いために、空が悪かったり口径が小さな機材では見づらいかもしれません。
仕事帰りで詳しい位置予報を持っていなかったので、概略の位置を彗星捜索の要領で探したのですが、見つけるまでに10分ほどかかりました。
今後も10等前後を保持するはずですので、来年早々まで見やすい状況が続きます。
やはり夕方に見えるSWANやBarnardと見比べると、同じ彗星でもずいぶん個性があるものだということがわかると思います。ここ最近の位置は、くじら座とおひつじ座の境目あたりです。

彗星を見た後、しばらく夏から秋の星雲・星団を見みました。みずがめ座のNGC7293も一発導入、久々に巨大でふわりとした独特の輝きを楽しみました。

2006年10月27日

●藤橋の光害防止型照明

この写真、何だかわかりますか。
実はこれは、揖斐川町役場藤橋振興事務所前の電柱に設置されている光害防止型の照明器具です。地面のみを効率よく照らすように深い傘がついている他、傘には夏の大三角付近の星が小さな穴で穿たれています。旧藤橋村内には、これと同じタイプ、または星座を描いていない簡略タイプの光害防止型街灯が何本か設置されており、その付近ではまさに「地上は明るく夜空は暗く」という理想の夜間照明が実現しています。

kougai1.JPG

この照明器具が設置されたのは、かれこれ10年ほど前のことになります。
その頃、旧藤橋村は「星のふる里」として売り出し中であり、西美濃天文台の活動がひとつのピークを迎えた時期でもありました。村当局も光害防止型照明の設置に理解を示し、プロトタイプ製作と設置の予算を認めてくれたために、こうした街灯を設置することができたのです。
それならばその後、村内にこのタイプの照明がどんどん増えたか、といえば、そうではありませんでした。プロトタイプを見た役場上層部と住民の「これでは暗い」という評価、また当時の為政者の「明るいことは発展の証」というポリシーによって、村内の街灯全てを光害防止型に置き換えようとした私たちのもくろみは潰え去ったのです。

もちろん役場上層部や住民に対しては、傘の設置により地上の明るさは確実に増していることを説明したのですが、「電球そのものが見えないと明るく感じられない」という感覚的な意見に押し切られ、また「明るいことはいいことだ」という為政者の姿勢を変えることもままならず、それ以上の進展はないまま、町村合併を迎えることになったのでした。

町村合併前からは、徳山ダム工事によって天文台周辺の光害が一気に増加し、天文台職員は雌伏の時を余儀なくされたのですが、私はあきらめてはいません。
町村合併のゴタゴタも一段落し、徳山ダム工事も終わりに近づいた今、再び満天の星空を取り戻す活動を始めなくてはならないと思っています。
天文台の移設もようやく完成に近づき、もう一度はじめの一歩を踏み出すときがきたのだと考えているのです。

2006年10月28日

●明け方の揖斐高原

28日は、明け方3時に起きて揖斐高原へ行きました。
快晴で絶好の条件でしたが、現地に着くと、西の方角が猛烈に明るいのです。坂内ホテルの照明なのか、南西のオリオン座あたりまで煌々と照らし出されていて、何とも異様な感じでした。
観測する方角は、幸いというべきか東でしたので、ほとんどその光害の影響を受けることはなかったのですが、こんな明け方にいったい何事?と思ってしまいました。

15cm双眼鏡で1時間ほど東を流しました。しし、かみのけ、りょうけん、おおぐまと星雲の多い場所なので、銀河が次々に視野に入ってきて退屈することなく観測できましたが、終了間際、急速にモヤってしまい、ちょうど視野に入ってきた9等ほどの雲状天体の確認が中途で終わってしまいました。
NGCナンバーのエッジオン銀河を多くとらえ、いかにも深宇宙を覗いているという感じがして楽しい観測でした。
オリオン群の余韻が残っているのか流星も多く、視野内をかすめたものが5個、たまたま視野から目を外して見上げた際に流れたものが2個と、あっという間に過ぎた1時間でした。
金曜日の晩にもかかわらず、他には誰も天文屋さんは来ていなかったようです。テニスコートの方には誰かいたかもしれません。

2006年10月29日

●アウトバースト後のSWAN彗星

バーストを起こして一時は4等まで明るくなった2006M4 SWANを、今日、仕事の帰りに藤橋で見てきました。

2006.10.29 18h30m JST m1=5.1 m2=- Dia=10′ DC=7 Tail=1°15cm×25双眼鏡

月齢7の月が明るい中でも、1度程度の尾が見えました。すぐ近くにM13があり、大きさも明るさも同じようです。ただ、そうしてすぐ近くにある同士で比較すると、やはり彗星独特の青白さは球状星団とはまったく違うことがわかります。
月明がなく透明度がもう少しよければ、ミニ百武彗星的なイメージで観測できたのではないかと思われます。
残念ながらバーストの最大光輝は過ぎており、これからは月も明るくなって見映えはしなくなりそうです。