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2007年01月26日

●論説「身近な生き物を守りたい」

 東京から、緑豊かな山村に移住して十年になる。十年経てば、さまざまなことが変わるものだが、何よりも大きな変化は、身の回りから生き物が消えてしまったことである。
 移住してきた当初は、庭に蛍が迷いこみ、初夏ともなればカエルの大合唱が聞こえ、雨の後には、サワガニが道路を渡っていたものだった。そうした小さな生き物たちは、年を追うごとに少なくなり、気づいてみれば、蛍はもとより、あれほど賑やかだったカエルの声も聞こえなくなってしまっていたのである。
 オタマジャクシやサワガニが群れていた畦や沢は、圃場整備と砂防工事によってコンクリートの水路となり、水田には繰り返し農薬が散布される。蛍の乱舞していた湿原は埋め立てられて駐車場となり、路傍の草にはこれでもかとばかりに除草剤が撒かれる。
 恐らくあと十年もしないうちに、カエルをはじめとする水辺の生き物の多くが絶滅危惧種になるだろう。バッタやカマキリといった身近な昆虫も、同様の運命をたどることは間違いない。
 今ならまだ引き返せる。人間の身勝手で、これ以上、小さな生命を殺してはいけない。

(2003年 朝日新聞掲載)

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