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2007年03月09日

●団塊世代の田舎移住を考える

マスコミ等によれば、退職後に田舎移住をしたいという団塊世代の方がたくさんいるようです。
そうした動向に合わせ、人口減少に悩む地方も、さまざまな優遇策を用意したりとPRに躍起になっているようですが、団塊世代の田舎移住は、移住者側、受入側双方にとって、実のところどれほどメリットがあるのでしょうか。

私は、14年前に東京から岐阜県の山村へ移住しました。
親、きょうだい、友人と離れて、それまでまったく縁のなかった地域への移住には不安もありましたが、ずっと憧れていた田舎暮らしが実現できること、しかも公開天文台の職員という長年の趣味を活かした仕事に従事できるという希望の方が勝った田舎移住でした。
地域の方の暖かさに助けられて、とりあえずは大過なく今日まで過ごすことができましたが、それでは何もかもが順調だったかといえばそんなことはありません。

まず、生活習慣やお付き合いの仕方の違いに驚かされました。
東京などの大都市では、良いか悪いかは別として、個人の権利やプライバシーが最優先されます。コミュニティにおけるお付き合いも、特に新興住宅街の場合はほとんどありません。
ところが、田舎では、自治会やPTAの役員から消防団や婦人会など、あらゆる役割が回ってきます。「のんびりした田舎暮らし」などは夢のまた夢で、休みの日も地域のさまざまな用事で動き回る日々です。
若年人口の減少のため、地域の役割を担わねばならない中高年層の負担は増加しています。

鉄道やバスといった公共交通が赤字で撤退していく中、自家用車なしでは生活が成り立たないのも田舎の現状です。
道路特定財源に関する議論も盛んですが、どこへ行くにも自家用車という生活習慣が定着している田舎では、たとえば一日に数台しかクルマが通らなくても、その地域に住民がいる限りは道路を作らなければならないという、税金の使途としては非常に不効率な現実がまかり通っているのが実態です。

団塊世代の方が本気で田舎へ移住されるのであれば、まずは地域のさまざまな役割を積極的に引き受けていただかなくてはなりません。
また、公共交通に期待できない現状では、高齢になってクルマの運転ができなくなった場合のことも考えておく必要があります。

こうした田舎の現状を考えると、それまで長い間、都会での生活に慣れてきた団塊世代の方々が、退職後の長い人生を、移住先で楽しく暮らせるとは思えません。
よほどの覚悟があれば別ですが、少なくとも「田舎はのんびりしていて心が安らぐ」だとか、「自然に囲まれて自分らしい暮らしができる」などという考えで田舎へ移住された方は、田舎暮らしの現実に困惑し後悔されることでしょう。
受入側にしても、そうしたお客さん気分で移住されることは期待していません。衰退していく地域の明日を本気で考え、自ら知恵と汗を提供して動いてくれる移住者を求めています。
厳しい言い方ですが、受入側が本当に望んでいるのはこれから子どもを産んでくれて地域のコミュニティを担ってくれる若者なのであり、団塊世代を歓迎する姿勢を見せているのは、あくまで次善の策なのです。

移住を検討されている団塊世代の方は、都合の良い夢ばかりを見るのではなく、田舎の現状を冷静に、そして徹底的に分析すべきです。
そうでなければ、移住者の方も、受入側の住民も、お互いに不満を募らせるだけの結果になってしまうでしょう。

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