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2008年03月24日

●新緑の天文台で(前編)

 先日は、前後編に分けて国立天文台の訪問記を書いた。どうせなら、ということで、今回も国立天文台ネタを書く。それも今を去ること25年前、1983年に、「象牙の塔」であった国立天文台に招かれて第一線の天文学者と議論を交わした話である。

 東大和天文同好会という会がある。1973年に、現在、愛知県東栄町の「スターフォーレスト御園」で天文担当として活躍しているS氏と私が創立した天文同好会だ。
 当時、東大和天文同好会では流星の観測が盛んであった。年間30夜以上の観測を5年間継続して、日本流星研究会から表彰状をいただいたほどであるから我ながらがんばっていたものだと思う。
 当時の流星観測は、肉眼で流星の数を数え、星図にプロットする眼視観測が中心だった。私たちも、若さにまかせてがむしゃらに観測を行っていたのであるが、観測を続けるうちに眼視観測に関していくつも疑問が湧いてきた。
 眼視観測では、観測時の最微等級、透明度、雲量などの条件によって、観測可能な流星数に大きな差異が出る。観測した流星数そのままでは統計処理の対象になり得ない。
 そのため、ナマの流星数にいくつかの係数をかけて、雲や障害物がなく6.5等星まで見える理想的な夜空のもとで観測したであろう流星数に補正して同一条件で互いの観測を比較できるようにする。
 また、流星群の場合は、輻射点高度が高くなるにつれて観測可能な流星数が増加するはずであるから、異なる時間帯の観測を比較するために輻射点高度の補正も行う。

650R1.JPG

 補正に使用する係数については、昔から多くの学者が研究を重ねてきた。どれも完璧とはいえないが、いずれにしてもナマのデータでは比較にならないため、正しい流星数と最も近似の数値が得られると考えられていた係数を採用していたのである。
 私たち東大和天文同好会のメンバーが疑問を感じ始めたのは、この係数についてだった。
 常々、例会などで話し合ってきた係数に関する疑問を、私たちは会誌の「ほしぞら」に座談会という形でまとめた。座談会でわかりやすく疑問を提示した上で、当時計算課長だったY氏が数式とグラフで理論的裏付けを示した。
『流星の眼視観測に未来はあるか』という、いささか挑発的な座談会のタイトルがいけなかったのだろう、天文雑誌の編集部で会誌を読んだ国立天文台のT先生から面談したいという要望が舞い込んだ。
 T先生といえば、アマチュア出身ながら観測派天文学者の旗手としてバリバリ業績を上げ、アマチュア向けの著書も多い有名人である。
 そんなT先生のお誘いに私たちは勇躍した。かくなる上はT先生を何としても論破し、そろそろ沈滞ムードが漂いつつあった流星観測を根本から変革してやろうと大いに意気込んで、5月のある日、東京天文台を訪れたのであった。

写真:国立天文台の65cm屈折望遠鏡。大きすぎて全部が写りませんでした。

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