« 詩「鏡」 | メイン | 初めての流星写真 »

2008年10月26日

●孤高な輝き「フォーマルハウト」

 冬や夏に比べると、秋の星空はどことなく寂しく感じられる。理由は明るい星が少ないからで、恒星のうちで最も明るい1等星が秋の夜空にはひとつしかない。
 この時期、夜の8時ごろ南の空を見ると、ぽつりと輝く明るい星が目にとまる。秋の夜空で唯一の1等星である「みなみのうお座」の「フォーマルハウト」だ。「魚の口」という意味のあるこの星、全天で21個ある1等星のなかでも18番目という明るさの上、南に低いので、何かと地味な印象の星である。しかし、その実態は太陽の15倍もの大きさがあり、1等星の中では4番目に太陽に近い恒星だ。

 中国ではこの星のことを、唐の都、長安の北門という意味の「北落師門」と呼んでいた。「北落師門」の詳しい意味や解釈はさておき、どことなく秋の夜空にぽつりと光るこの星の、孤独で寂しげな印象をよく表しているように思われる。日本では昔から「秋のひとつ星」などと呼ばれ、これもまた簡単明瞭で、この星のたたずまいに相応しい名前である。

 冬や夏の賑やかな夜空も素晴らしいが、秋も深まり、冷たい風に吹かれながらフォーマルハウトの孤高な輝きを見つめていると、去りゆく季節の寂しさと、これから訪れる厳しい冬の予感をにわかに身近に感じてしまう。移ろう季節を天界に見いだすのも、星も見る楽しみのひとつである。

初出:岐阜新聞連載「ぎふ星見人」(1992年11月3日)

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://at-h.net/~has/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/481

コメントする

(初めてのコメントの時は、コメントが表示されるためにこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまでコメントは表示されませんのでしばらくお待ちください)