2009年12月02日

●「星を見るパパ」

娘が4歳のときに描いた絵です。
題して「星を見るパパ」。
揖斐川町の西美濃天文台で開催した「第4回全国の天体観測施設の会」の収録の表紙に使われました。
私を知る人に言わせると「おおっ、そっくり!」とのこと。
幼児のことゆえ稚拙な絵ではありますが、たしかに特徴はしっかりととらえています。
望遠鏡のようなものを覗いていますが、これは大型双眼鏡です。
私の愛機であるフジノン15cm双眼鏡ですね。

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このときの会合では「公開天文台の人員環境」を主なテーマとして話し合いました。
当時は公開天文台の開設ブームで、カネも人も揃った施設が現在よりはずっと多かったのですが、その頃から西美濃天文台スタッフは、いつまでもそんな時代は続かない、いずれは予算も人も大幅に削減される時代がやってくることを予期して、予算はともかく、職員の待遇と確保を訴えてこうしたテーマを設定したのです。
予想は見事に当たり、現在の公開天文施設は、一部の恵まれた施設を除いて、お寒い限りの予算と職員数となってしまいました。
そう考えると、いささかほろ苦い思いもありますが、当時を思い起こさせる懐かしい絵です。

2009年12月04日

●夜空を見上げて

晴れた晩に夜空を見上げるとたくさんの星が光っています。
どの星も半球上の夜空に貼りついている光の点に見え、私たちにはそれぞれの星までの距離はどれもまったく同じに見えます。
ちょうどプラネタリウムの丸天井に映っている星を見ているのと同じ感覚ですね。

でも、少し見方を変えてみると、実際の星空はプラネタリウムとはまったく違ったものであることに気がつきます。
そこに輝くあらゆる星々は、すべて地球からの距離がまったく違っているのです。
星空は地球を取り巻くはるか遠くまで広がった空間で、そこに輝く星までの距離はさまざま、一見、半球状に思える星空は、実は非常に立体的というわけです。

そう考えると、地球が広大な宇宙に浮かんでいる小さな世界であることがわかります。
私たちにとっては、とても大きな地球ですが、肉眼で見える星までの距離が、秒速30万kmの光でも数年から数千年かかる距離にあることを考えると、実はとても小さな天体なのです。

昼間は太陽が明るくて星の光がかき消されてしまっていますが、夜ともなれば、ただ空を見上げるだけで、地球上のスケールでは考えることもできない遠方の空間を見ることができます。
それも、望遠鏡などの特別な装置を使うことなく、ただ肉眼だけで。
これって考えてみれば、すごいことだと思いませんか。
星空こそは、人類が認識することができる最もスケールの大きな自然なのです。
私はいつも、星空を見上げて宇宙の広大さに感嘆するとともに、地球という惑星の小ささを実感します。
ただ、そんな小さな地球上でしか人類をはじめとした生物は生きていくことができません。
宇宙の広大さ、地球の小ささ、そして地球環境の大切さをいつも考えながら、私は星空を見上げています。

2009年12月06日

●伝統的日本建築の美しさ

昨日は、一宮市尾西歴史民俗資料館別館となっている旧林家の見学に行きました。
しばらく前にも訪れたのですが、その際はちょうど紅葉まつりの最中で人がたくさんいたために、家屋内部を見学することができなかったのです。

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旧林家は、美濃路の起宿(おこしじゅく)の脇本陣です。
江戸時代の伝統的な町屋建築の様式を伝える住宅で、玄関、母屋と裏座敷で構成されています。
外回りは建築当時の古いガラスを使った戸で囲んであり、廊下を歩けば、ガラス越しに見事な日本庭園を望むことができます。

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雨のせいか訪れる人もごく少なく、案内してくれたogawa嬢と二人、しんと静まり返った畳に座り、濡れた日本庭園を眺めていると本当に心が落ち着きました。
庭園の紅葉は終わりかけでしたが、雨に打たれた真っ赤な葉がちらちらと緑の苔の上に落ち、美しいコントラストを見せていました。
庭には水琴窟が2箇所に作られており、水を滴らせてみると、澄んだ美しい音が聴こえました。

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洋風の住宅が増える昨今ですが、やはり日本の風土には、木と紙で作られ、四季折々の自然を愛でることができる庭をしつらえた伝統的日本建築がいちばん合っている気がします。
娘も日本建築が好きなので、機会を見てもういちど娘同伴で訪れたいと思っています。

2009年12月09日

●15cm双眼鏡の本領発揮!

昨夜は、久しぶりに藤橋に観測に行きました。
車に15cm双眼鏡を積んであるので、職場からそのまま観測地へ直行できます。

冬型が緩んで、気温は3度と比較的暖かい夜でした。
揖斐川町東横山の「遠めがねの丘」と呼び慣わしている観測地に15cm双眼鏡をセッティング。
西の空を1時間ほど捜索しました。
透明度は抜群とはいえないものの、天の川も綺麗に見えるまあまあの空です。
M2、M30、NGC7293を捜索中に見ました。
NGC7293は、みずがめ座にある大きな惑星状星雲で「らせん星雲」の通称で知られています。
本当に大きな星雲で、25倍2.7度の視野の3分の1ほどを星雲で占めてしまうほどです。
ただし淡いので、街中では見ることができません。

捜索後、いくつか星雲星団を観望しました。
ちょうこくしつ座のNGC253とNGC288に双眼鏡を向けると、見ようによってはM31よりも立派でカッコイイNGC253が視野に大きく飛びこんできました。
暗黒星雲と散光星雲が入り組んだ腕の構造は、何度見てもすばらしいものです。
NGC288は、NGC253のすぐ南にある大きな球状星団です。

次に方向を転じて、はくちょう座の網状星雲。
地球に距離が比較的近い超新星残骸です。
天体写真ではおなじみの星雲ですが、眼視で見たことのある人は案外いません。
天の川の中ということで、視野内は無数の微星で埋め尽くされています。
そんな微星の中に漂う星雲の姿は、ふんわりと柔らかい印象で、写真とはまた違った趣きを感じさせてくれます。
空の暗い場所で明るい機材を使わないと見えませんが、まだご覧になったことがない方は、ぜひ一度、お勧めしたい対象です。

西の空には夏の大三角が沈みかけ、東からはオリオンが勢いよく昇ってくるこの季節、実は面白い天体がけっこうたくさん見えているんですね。
15cm双眼鏡の実力を実感した観測でした。

2009年12月11日

●動物は音楽がわかるのか?

猫を7匹、うさぎを1羽飼っています。
朝晩は動物の世話が欠かせない毎日のなかで、日ごろから疑問に思っていることがあります。
それは「動物は音楽がわかるのだろうか。わかるとすれば、動物の種類や個体によって音楽の好き嫌いはあるのだろうか」ということです。

ウチのうさぎはアルネ君という8歳になる長寿うさぎです。
アルネ君は、音楽をかけると確実に反応します。
長い耳をそばだてて聴きいっているかと思えば、音楽に合わせて跳びはねたりもします。
バラード系よりもロック系のビートのきいた楽曲によく反応しているようです。
嫌がっているようすではないので、たぶんアルネ君はロック系の楽曲が好きなんだと思っています。

猫も音楽に反応します。
アルネ君と違ってロック系は苦手のようで、スローバラードやヒーリング系が好みです。
ただ、ギターを猫部屋に持ち込んで弾いたりするのは苦手のようです。
音がどうのというよりも、ギターそれ自体が怖いみたいです。

よく、牛に音楽を聴かせるとお乳の出がよくなるとかいう話も聞きますよね。
動物は音楽がわかるのか。
知っている人がいたら教えてください。

2009年12月13日

●晴れました!美濃市の観望会

昨夜は、岐阜県美濃市で行われた親子対象の観望会をお手伝いしてきました。
あまり芳しくない天気予報どおり、夕方まで雲が多い空模様。
ただ、何となく晴れそうな予感がしましたので、早々と現地入りしました。

食事をして現地へ行くと、おお、予想通りどんどん晴れてくるではありませんか。
さっそく望遠鏡を組み立てます。
年末でふたご座流星群極大直前のためか、お手伝い要因は少なかったのですが、ドブソニアンが3台、広視野屈折望遠鏡が1台、そして私の15cm双眼鏡と、なかなか豪華な望遠鏡が揃いました。

はじめに世話役?のFurukawaさんがふたご座流星群の説明。
続いてogawa嬢が星座解説。
その間にもふたご群とおぼしき明るい流星が飛んで会場はざわめきます。
(私は1個も見られませんでした・・・泣!)

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あとは、すばる、M42、M31、ペルセウス座の二重星団など代表的な秋の天体を観望。
観望会後半は雲もほとんどなくなり、透明度も良くなってきて参加者は大満足。
観望会の合間に、ドブソニアンの見え味対決がひそかに行われたようですが、決着は次回に持ち越されたようでした。
3台のドブソニアンは、大きさも違えば、色も、黒、赤、白とバラエティ豊富。

写真は、おおのさんの通称「赤ドブ」。
その色と大きさで、子どもたちに大人気でした。

会場では1個も流星を見られなかった私ですが、終了後、マイナス等級のふたご群を1個だけ見ました。
翌日の極大に期待がふくらみますが、さて、お天気はどうでしょうか。

2009年12月14日

●ふたご座流星群、ばっちり観測できました

昨夜は、ふたご座流星群を観測しました。
今年は天候が不順で、直前まで天気予報とにらめっこ。
長年の観測経験で培われた(?)霊感も加味して、今回は職場のある岐阜県揖斐川町で観測することに決めました。

昨日夕方までは降り出しそうな快曇。
それでも、22時頃から晴れ始め、予想通り、すぐに雲ひとつない快晴となりました。
晴れているうちに少しでも観測しようと、予定より早めに観測地へ。

準備もそこそこにシュラフにくるまって観測を開始。
いきなりマイナス等級の群流星をふたつ見て、「おお!これはいいぜ!」
と思ったのですが、その後はやや伸び悩み傾向です。

しばらくすると、日食で同室だったメンバー2名が到着。
このブログでもおなじみogawa嬢とPapaさんです。
ややうす雲が出始めたものの、ふたご群は頻々と流れます。
一人の観測もいいですが、やはり仲間がいると楽しいもの。
しかも日食で1週間起居を共にした同士ですから気心も知れています。

極大が14日の午後ということもあって、明け方に向かって増加傾向ながら、真の極大の派手さはなく、坦々と流星をカウント。
いちばん明るかった流星が-2等級、もともと痕を残すことの少ない流星群ということもあり、地味に堅実に数を増やすという感じです。
それでも4時台には1時間におよそ60個の流星を数え、極大前にしては順調な出現だったように思いました。

wintertri01.jpg

風がなかったこともあって、車のガラスやシュラフが凍る気温だったにもかかわらず、さほど寒さは感じません。
オリオン座が西に傾き、しし座が高く昇り、明け方の星空は完全に初夏です。
季節を先取りした嬉しさを感じながら、薄明まで観測しました。
時おりうす雲が出たものの、じゅうぶんに暗い空の下で、たっぷり流星を楽しむことができた一晩でした。
今回の観測が晴れたことで、オリオン、しし、ふたごと、秋から冬の流星群はこれで完勝となりました。

極大が今日の午後でしたから、今夜も昨夜と同程度は見られるはず。
極大後の方が明るい流星が多い傾向があるので、晴れていれば楽しめそうですが、どうも天候が怪しい。
何とか晴れてくれないかな。

写真:傾いた冬の大三角。時おり雲が広がりました。

2009年12月15日

●細切れ観測と火球

今年のふたご座流星群は、14日昼間が極大のため、13/14日、14/15日の両日ともに多くの流星が出現すると予想されていました。
13/14日はすでにお読みいただいたとおりですが、それでは昨夜はどうだったのでしょうか。

昨日の夕方、岐阜県西濃地方は音を立てて雨が降っていました。
「これは夜半過ぎしか晴れないかも」と思いながら、のんびり食事をしていたら、ogawa嬢から「晴れてるよ」とメールが。
外に飛び出すと、たしかに良く晴れています。
準備もそこそこに昨夜の観測地へ。
雨で塗れた地面にシートを敷いて観測を開始。
時おりうす雲が去来するものの、昨夜と同程度の数が見えています。
しかも地味で暗い流星が多かった昨夜と違って、平均光度が明るい!

CMa01.JPG

楽しい観測となりましたが、問題は去来するうす雲。
もちろん、雲があっても流星はそこそこ見えるのですが、データを取るための「観測」となると雲量3以上では信頼度が低くなります。
何とか30分の観測を確保し、雲から逃れようと揖斐川町谷汲にある秘密観測地へ移動。
さすがに空は暗く、天の川がバッチリ見えます。
観測開始後すぐ、輻射点近傍にマイナス4等級の火球が!
ほとんど停止流星だったため、夜空にとつぜん金星が出現したようで、まぶしささえ感じるほどの見事な火球です。
誰もいない山の中で、思わず「すげー!」と叫んでしまいました。

やがてここにも雲が押し寄せ、諦めて帰ろうと車を走らせていたら職場の人から「自宅前で見てるけど快晴だよ」との電話が。
最初の観測地へ戻り、たしかに快晴となった空の下で再び観測を開始。
結局、30分ほど観測したらうす雲が出始め、データを取るための「観測」はこれで終了。

細切れの観測となりましたが、「観測」ではなく「観望」していた時間も含めると、昨夜に続いて多くの流星を見ることができ、満足して帰路につきました。

写真:うす雲がかかる「おおいぬ座」。二日間ともに南天から雲が湧いていました。


2009年12月17日

●火球の明るさ

先日のふたご座流星群では、久々にマイナス4等級の火球を観測しました。
「いきなり金星が夜空に出現したような」と書きましたが、火球を見るたびに思うのが、等級決定の難しさです。
今回の火球は、明るい頃の金星と同等程度と思ったので、マイナス4等と目測しました。
それでも、真っ暗な夜空に突然金星と同等の明るさが出現したわけですから、慣れない人には恐ろしく明るく感じてしまいます。
ましてや、金星以上に明るい火球だったら・・・。

過去に私も、地面が明るく照らし出されるような火球を何度も見たことがあります。
そうした場合、客観的に等級を判断できたかといえば疑問符が残ります。
これまで火球は数えきれないぐらい見てきましたので、必要以上に明るく見積もることはないと思ってはいますが、比較星がないために経験と勘で判断するしかないためです。

皆さん、ご存知のとおり、流星の明るさは夜空に輝く星と比較して決定します。
木星が見えていればマイナス2等級までは目測可能ですが、金星は明け方か夕方にしか見えませんし、ましてや金星以上明るい星は通常、私たちは見ることがありません。
「月と比較すれば・・・」と思う方もあるかもしれませんが、面積体の月と点光源の流星とは比較できないのです。

比較星がないのですから、金星よりも明るい火球については頭の中に光階を作成してえいやっで決めることになります。
空の暗い場所で地面に影ができるのが、おおむねマイナス5等級以上です。
オーストラリアの砂漠などでは金星でも影ができるそうですが、日本国内の環境ではなかなか難しいことでしょう。

では、それより明るい火球は?
半月なみに地面が明るくなるのがマイナス7~8等級、満月なみがマイナス10~15等級とも考えられますが、かなり曖昧な感覚です。

マイナス4等級よりも明るい火球の目測は本当に難しいものです。
経験の少ない人が見た場合は、マイナス2等級程度でも恐ろしく明るく見積もってしまうことがあるぐらいですし、かなりの経験者でも驚きと嬉しさを加味してしまい、無闇に明るく見積もってしまうことが、ままあります。

皆さんはいかがでしょうか。
火球の明るさを正確に目測できる自信があるでしょうか。

2009年12月19日

●今日は大雪

今日は朝から大雪です。
昨日の夜までは晴れて星も見えていたのに、朝起きたら一面の銀世界。

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これが休みの日だったら、雪景色がきれいだなぁ、で済んでしまうのですが、あいにくの出勤です。
午前中、町内の学校が農業体験に来る予定だったのですが、当然キャンセル。
関係者にまず電話をかけまくりキャンセルの旨を伝え、それから車を出せるように除雪。
雪は、特別豪雪地帯だった旧藤橋村在住中に慣れているので、特に苦労せず職場へ。
ただ、道路はノロノロ運転なので、早く家を出たにもかかわらず、職場へ着いたのはいつもと同じ時間になってしまいました。

職場でもまず除雪。
とはいえ、今日はあいにく一人出勤なので、玄関前と駐車場をちょこっと除雪しただけ。
今のところ、職場は積雪30cmほどです。
予報では明日まで降るとのことなので、もう少し積雪が増えそうです。

写真は職場の雪景色。
学校の体験もなくなったので、雪を眺めながらのんびり仕事します。

2009年12月23日

●スター・ウィーク実行委員会に出席しました

国立天文台で開催されたスター・ウィーク実行委員会に出席してきました。
スター・ウィークは、1995年に西美濃天文台で開催した「全国の天体観測施設の会」を契機に始まりました。
毎年8月1日から7日まで、たくさんの方に星空を見上げてもらおうという週間で、全国の公開天文施設と連携した催しや、パソコン・携帯電話を活用した参加型のイベント実施などを行っています。
勤務していた西美濃天文台が発祥の地ということもあって、私は当初から委員として参加してきました。
国立天文台に事務局はありますが、基本的には委員の創意工夫とボランティアによる草の根型のキャンペーンです。
お役所主導のキャンペーンが多い中、ユニークな運営形態として注目されてきました。

当初は、全国の公開天文施設に協力を願ってイベント募集などを行ってきましたが、ここ数年は天文ファンのみならず、ふだんは天文に興味のない一般の方にも星空を見上げてもらおうという方向性を打ち出しています。
今年は世界天文年ということもあって、一般の方にも星空を身近に認識していただけましたので、来年度以降はスター・ウィークを盛り上げていくことによって、せっかく深まった星空への興味を絶やさないようにしてゆければと思いながら会議に参加していました。

全国から集まった実行委員による活発かつ有意義な討議が行われ、短期的な成果ではなく、長いスパンで地道に天文普及活動を行っていこうという趣旨の下、来年の計画が策定されました。

いろいろな意味で来年はスター・ウィークの活動の節目となる時期になります。
今年以上にがんばって盛り上げていきたいと思っていますので、このブログを読んでいただいている皆さまにも、よろしくご協力をお願いいたします。

2009年12月25日

●憧れの65cm屈折望遠鏡

先日、国立天文台へ行った折、少し時間があったので構内の一角にある「天文台歴史館(大赤道儀室)」を見学してきました。

ここは、日本最大の屈折望遠鏡として有名な65cm望遠鏡を収めた直径15mの大ドームです。
ドームは、東京帝国大学営繕課が設計して大正15年(1926)に完成しました。
ドームを載せている建物は鉄筋コンクリートづくり2階建てで、地面からは19.5mの高さがあります。
ドーム部分は木製で、細かい板をきっちりと組み合わせた構造が、職人芸と長い歴史を感じさせてくれます。
床はエレベーター構造となっていて、長い鏡筒の位置に合わせて昇降させることにより、快適な観測を行うことができました。

NAO65cmR01.jpg

このドームの中央に鎮座しているのが、焦点距離1021cmの大屈折望遠鏡です。
カール・ツアイス製で、1929年に完成しました。
1960年に岡山天体物理観測所の188cm反射望遠鏡が竣工するまでは日本最大の望遠鏡として、天体の位置観測や分光観測、掩蔽(月が星を隠す現象)観測などさまざまな観測に用いられました。

この望遠鏡は、子供の頃からずっと憧れでした。
天体の図鑑に載っている写真を見ては、いつかは実物を見てみたいといつも思ったものです。
私は屈折望遠鏡が好きですが、この望遠鏡のイメージによる部分がかなり大きいような気がします。
この望遠鏡、現在は観測に使われてはいないものの、いつでも使える状態にあるそうです。
幼い頃から憧れてきたこの大屈折望遠鏡が、いつか現役に復帰する日が来てほしい。
そんな期待を胸に秘めながら静寂のドームを後にしました。

以下に関連記事があります。
以前に国立天文台構内の諸施設を見学した際の見学記です。
よろしければご笑覧ください。

2008年3月19日「国立天文台見学記(前編)」
2008年3月22日「国立天文台見学記(後編)」

2009年12月26日

●詩「青い先史」

火星の小さな湖のほとりで
あなたに出会ったときのこと
今でもよく覚えています
あなたは白い服を着て
だまってさざなみを見ていましたね

ふりむいたまなざしがとてもきれいで
透明な水と
渚の砂の白さ
なんだかすべてがとても似合っていて

何を話したのか
覚えていません
でも
あなたが立ち去ったあとの
星が見えるほど深い火星の空の青さだけは
今でも痛いくらいに
よく覚えているのです

☆地球のお隣の惑星、火星。
直径が地球の半分ほどと小さなこの星は、現在は大気が薄く液体の水もなく、寒く乾燥しきっていますが、昔は今よりも温暖湿潤で浅い海や湖もあったといわれています。
おそらくその頃の火星の海や湖は、有機物をあまり含まず、太陽から遠く大きな衛星もないことから潮汐の影響もさほど受けることなく、とても透明で穏やかだったことでしょう。
そんな静寂の湖畔で出会ったその人の面差しは淡いながらも鮮鋭で、それだけにその人が立ち去った後の空の青さが記憶に深く沁みこんでいます。
今から何億年か以前のできごとです。

2009年12月28日

●旧暦のカレンダー

先日、いつもお世話になっている設計事務所さんからカレンダーをいただきました。
この時期ですから珍しくもないこと・・・と思ったら大間違いで、なんと旧暦で表示されているカレンダーなのです。

以前からその設計士さんは
「農業にしても日常生活にしても、日本人の暮らしは旧暦に基づいた自然のサイクルに沿っている。すべての自然現象が1ヶ月ずれている新暦で暮らしていると、日本人としての精神文化にやがて重大な影響がでてくるのではないか」
と言っていました。

このカレンダーを制作したのは、自然を愛する仲間とともにエコロジーを実践し、心と心のお付き合いを深めることを目的とした団体で、その会員の方が設計士さんのお知り合いなのだそうです。

カレンダーには、旧暦の日付が大きく、新暦(グレゴリオ暦)の日付が小さく表示されています。
同時に、おおよその月齢が図で表示されています。
月の満ち欠けを基本にしている旧暦(太陰太陽暦)ですから、これは適切な配慮です。
新暦と違って、当然ながら日付と月齢はほぼ一致しています。
すなわち、旧暦の7月7日は毎年ほぼ上弦であり、8月15日は毎年ほぼ満月(中秋の名月)なのです。
新暦で梅雨の真っ最中に星の見えない七夕を祝うより、旧暦で半月と星空が美しい、まさに星月夜に七夕を祝うほうがどう考えても自然ですよね。
また、一年で最も寒い時期である新暦の1月1日を「新春」といわれてもピンとこないものの、たとえば来年の旧正月が2月14日だといわれれば、ああ、その頃だったらようやく春めいてくる頃だなあと誰でも思えます。

旧暦で厄介なのは、月の一年を太陽年365日に合わせるために、19年に7回、1年を13ヶ月にする「うるう月」を加えなければならないことです。
2~3年に一度「うるう月」が加わるために、一年の日数は353日の年もあれば385日の年もあるという不思議な暦ですが、もともと農暦として中国から取り入れられたことからもわかるように、実は自然のサイクルに適合した使いやすい暦となっています。

カレンダーには、旧暦の11月1日~12月30日(新暦12月16日~2月2日)までが表示されています。
来年の日数は12ヶ月で354日です。
日数を計算し始めると混乱してきますが、七夕や旧正月の例のように日々の季節感からとらえるならば、旧暦は日本人の生活にごく自然にフィットします。

自然回帰やエコロジーが叫ばれる昨今、旧暦の意味と価値をもう一度見直す必要がありそうです。

2009年12月31日

●おねえさんに会いたい

先日、このブログでおなじみのogawa嬢が遊びにきました。
チャイムの音に玄関を開けると笑顔のogawa嬢が「ビビちゃんが出迎えてくれたの」。
私より先に彼女を出迎えたのは、我が家に7匹いる猫のうちでいちばんの古株であるビビさんでした。
ogawa嬢がビビさんに会うのは初めてではありません。
秋にも会ったことがあり、そのときの懐きようは、ふだん警戒心が強いビビさんとは思えないほどでした。
今回も、ビビさんをはじめ猫たちや、うさぎのアルネ君に会いたいといって我が家を訪ねてくれたわけですが・・・。

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ビビさんの喜びようは近年にないほどでした。
ogawa嬢の前でごろんと横になり、撫でられれば喉を鳴らしながらogawa嬢の手や膝を甘噛みし、満足しきった表情です。
私のことは(たぶん異性として)愛し信頼しきっているビビさんですが、家族以外の、しかも一度しか会ったことのないogawa嬢になぜこれほどの親近感を示すのか、本当に不思議です。

やがて、ogawa嬢が帰る時刻になりました。
ogawa嬢を見送ってからビビさんが残っていた部屋に戻ると、足が悪くいつもはヨタヨタとしか歩けないビビさんがダッシュで玄関へ走っていきます。
玄関を探し、2階への階段を見上げ、廊下を探し、部屋に戻って何度もあたりを見回し、あげくはピアノの上に飛び乗って高い位置からもう一度部屋を探し・・・。
やがて私の足元に戻ってきたビビさんは、私の顔を見つめて「にゃ」と鳴きました。
『おねえさんはどこに行っちゃったの?おねえさんに会いたい』
ビビさんの声と表情がそう言っています。
「おねえさんは帰っちゃったんだ。しばらくは会えないよ」
私は答え、なんだか切なくなってビビさんをそっと抱きしめました。

翌朝もビビさんの問いかけは同じでした。
『ねえ、おねえさんはどこにいるの?おねえさんに会いたい』
玄関を見に行き戻ってきては、無邪気な瞳で問いかけます。
「また来てくれるから。それまで我慢して待っていようね」
そう答えるしかありません。

ogawa嬢は不思議です。
たった2回会っただけなのに、これほどまでにビビさんの心をとらえてしまったなんて。

いま、ビビさんは、私の足元で丸くなって寝ています。
ときどき笑顔を浮かべ、楽しげな寝言を言いながら。
おねえさんと遊んでいる夢でも見ているのかもしれません。

写真:ビビさん