2010年02月01日

●電波観測とBCL

天文学というと「天体望遠鏡で星を見る」というイメージが強いのですが、実はそれはひとつの観測手段に過ぎず、他にも様々な手法で観測が行われています。
「電波」を使った観測もそのひとつ。
宇宙からは、様々な電波が届きます。
天文学者は、大きなアンテナを構えて宇宙からの電波を受信し、光で宇宙を見るのと同じように電波の目で宇宙の構造を調べているのです。

「望遠鏡で覗く」のと違って、なんとなくとっつきにくいこの電波。
私は、中学生時代に流行ったある遊び、というか趣味のおかげで、電波の基本を理解することができました。
その趣味「BCL」といいます。
海外や国内の放送局の電波をとらえ、受信報告書を送って「あなたは正しくウチの放送局の電波をとらえました」という証明書(ベリカード)を貰うというものです。

電波は、その名の通り「波」として伝わっていきます。波の間隔の長いものから、長波、中波、短波、超短波・・・と呼び名が変わっていくのですが、当時、私が持っていたラジカセで聴くことができたのは、中波と短波、低い波長帯の超短波だけでした。
中波は通常のラジオ、超短波はFM放送と理解していただければOKです。
短波あまりなじみがないのですが、地球の裏側まで届くという特性を利用して、海外向けの放送に多く使用されています。

のめりこむタイプの私ですから、そんなしょぼいラジカセを最大限に活用して世界中の放送局にトライしました。
自作のアンテナを家に張り巡らせ、雑音の中にかすかに聴こえる放送を必死に聴き取り、日本語放送だけではなく英語や中国語、スペイン語局にまで手を伸ばし・・・。

ベリカードの数はどんどん増えました。
南米やアフリカの局、中国の国内向け放送局、また日本国内のほとんどすべての中波局など、あんなしょぼい受信機でよくあれだけがんばったと今でも思えるほどです。
電波に関する本も読み漁りました。
その結果、自然に電波の知識が身についたわけで、その後、天文分野でもその知識は大いに生かされることになりました。

藤橋在住中は流星の電波観測(HRO)をずっと行っていましたが、引越し後、アンテナは取り外したままになっています。
またHROを再開しようかな。
海外放送、今はどんな局があるんだろう。
また聴いてみようかな。

注:電波とは、電磁波のうち赤外線より波長の長いものを指します。
天文学では、通常の放送に使う電波より短い波長の電磁波(ミリ波やマイクロ波)を使用することが多いです。

2010年02月03日

●茅屋根葺き替え工事進行中

勤務している揖斐川歴史民俗資料館敷地内にある、旧徳山村から移築した民家の茅屋根を葺き替える工事が進んでいます。
民家全体を覆う素屋根をかけて、天候にかかわらず作業を行っているために工事の進捗は早く、現在、古い茅をすべておろして新しい茅を下から順に乗せているところです。

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掲載したのは、茅葺き民家の骨組みが露出している珍しい写真。
垂木の上に細い横竹を乗せて骨組みができていることや、破風の作りがよくわかりますね。
内側から骨組みを見ると、斜めに組んだ垂木を結んで横木が入っていました。
旧徳山村は大変に雪深い所ですから、屋根に積もった雪の重量も相当なものになります。
横木を入れて耐雪性を強化したのでしょう。

3月には工事完成の見込みです。
2月20日(土)には、午前11時からと午後2時から、茅葺き工事の現場見学会も開催します。
また近づいたらご案内しますが、滅多に見ることのできない茅屋根の葺き替えを、この機会にご覧になってみてはいかがでしょうか。

2010年02月04日

●初めての天体望遠鏡

天文を始めて35年が過ぎました。
何台もの天体望遠鏡を使用してきましたが、初めて天体望遠鏡を買ったのは小学校6年生のときです。
それまでは、科学雑誌の付録だったシングルレンズ紙筒の望遠鏡を使っていました。
しかし所詮は雑誌の付録です。色収差で何ともならず、乏しい小遣いを貯めてミザール(日野金属工業)のカペラDXという、口径60mm、焦点距離1000mmの屈折経緯台をようやく購入しました。

firsttelescope01.jpg

今でこそ、ミザールはあまりメジャーなメーカーとは言えませんが、当時は最もポピュラーなブランドで、ビクセンはその後塵を拝するといった感じでした。
口径比16.7という無理のない設計でしたから、色収差も目立たず良く見えた・・・はずなのですが、いかんせん、付属していた接眼レンズがボロボロでした。
付属のハイゲンス20mm、12.5mm、8mmは30度程度の見かけ視界しかなく、当時はそんなものだと思っていたものの、今から思えば針の穴から覗くようなもので、月や惑星はまだいいものの、星雲・星団の導入には、東京の明るい空、劣悪なファインダーと相まって恐ろしく苦労させられました。
脆弱なフリーストップの架台にも泣かされたものです。
指導者もなく、案内書と首っ引きで星雲・星団を探すのですが、M31ですらなかなか見つかりません。
そんなバカな!と思われるかもしれませんが、天文を始めた頃の私はその程度の技量でした。

中学生の頃、不注意からこの望遠鏡を倒してしまい鏡筒が割れてしまいました。
涙が出るほど悲しかったことを覚えています。
それでも割れた部分を修理して、高校生頃まで使いました。
その頃には赤道儀式の望遠鏡も購入していましたが、初めての望遠鏡ということで愛着があり、人を集めての観望会の際などには活躍しました。

高校生の頃、同じクラスに天文が好きだけれど望遠鏡を持っていないという友達がいて、彼に貸し出したまま、私の1号機とは縁が切れてしまいました。
卒業後、音信不通の彼は、まだあの望遠鏡を持っているでしょうか。

写真:初めての望遠鏡で昼間の金星を見ています。中学1年生の頃だと思います。

2010年02月06日

●「天文登山」が当たり前だった頃

今でこそ星を見に行くときは車に望遠鏡を積んで空の暗い場所へ、というスタイルが当たり前になりましたが、私が学生の頃は、望遠鏡やカメラを担いで山に登って星を見る、というスタイルが普通でした。
車を持っている人は少なく、列車とバスを乗り継いで登山口へおもむき、あとは体力勝負でひたすら山頂を目指すのです。
私を含め、東京在住の天文屋さんは、奥多摩や奥武蔵の山へ良く登りました。
持参する望遠鏡も、ポータブル赤道儀を持っている人はごく少なく、当然のようにF15屈折やF10反射を担ぎ上げたものでした。
先日、記事に書いた初めての望遠鏡も乗鞍や房総半島へ持って行きましたし、2台目に買ったビクセンのポラリス60屈折赤道儀(口径60mm焦点距離910mm)や3台目のミザールAR-100SL反射赤道儀(口径100mm焦点距離600mm)などは、頻繁に奥多摩の御岳山へ担ぎ上げました。
屈折望遠鏡は、重いことはもちろん、鏡筒と三脚が長いことが厄介でした。
背負子にくくりつけて山道を登るのですが、狭い登山道、木立に鏡筒や三脚が引っかかって歩きづらいことこの上もありません。
3台目のAR-100SLは、いわゆる短焦点反射だったので鏡筒も短く、屈折系ほどの大変さはなかったものの、それでも望遠鏡を含めた荷物の重さは30kg以上になります。
そうなると、頼れるのは若さや体力ではなく、ひたすら気合。
当時の東大和天文同好会では、ことあるごとに「男じゃねえなー!」という叱責が飛び交いましたが、実際、望遠鏡を山に担ぎ上げるだけの根性がない者は、まともに暗い夜空の下で星を見ることができなかったわけで、必然から出た言葉でした。(あ、女性を蔑視しているわけではなく、当時の会には男しかいなかったのです・・・)
で、山頂の観測地では当然、野宿です。
テントがあれば天国で、雪の上にごろ寝をして一晩を過ごしたこともありました。
今から思えば無茶なことばかりしていましたが、あの頃、体力と根性の限界線上で見上げた星空は限りなく美しいものでしたし、苦楽を共にした仲間は今に至るまで生涯の友となっています。
いずれ機会を見て、当時登った山でもう一度、一晩野宿して星を見上げたい。
そんなことを思います。


2010年02月08日

●炭素星の魅力・・・オリオン座W星

昨夜は久々に晴れましたので、勤務先の駐車場に15cm双眼鏡を組み立てて冬の天体を観望しました。

まずはじめに、先日も記事に書いた、うさぎ座のクリムゾンスター。
二度目の対面になるクリムゾンスターは、やはり驚くほど赤く、しかも前回よりも明るくなっていました。
用意しておいた変光星図で比較星と比べてみると、北西にある5.9等星とほぼ等しい明るさに思えました。
ただ、赤い星の光度目測は難しいので、変光星の専門家が見れば違う結果になるのかもしれません。

次に、オリオン座Wという星を見ました。
これも炭素星で変光星です。
クリムゾンスターと並ぶ赤い星ということで期待して見たところ、おお!これも赤い!クリムゾンスターと比較しても遜色ない赤さです。
明るさはやはり6等級前後でしょうか。
この星の変光星図は見つからなかったので、目測はしていません。
はじめは、オリオンが左手に持っている毛皮を形づくる星々からたどり導入したのですが、たどる星が多すぎて案外見つけづらく(副産物?として、やはり赤い変光星である8番星を見ることができましたが)、うーむ、と思っていたところ、一緒に見ていたogawa嬢がリゲルからたどる方法を提唱、やってみると、その方法の方が探しやすいことがわかりました。
次回は、りょうけん座のY星を見ようと思っています。
この星も炭素星で、きれいな深紅色らしいです。
何だか最近、炭素星の魅力にとりつかれてしまっています。

M78、M79、h&χを見た後に、私の好きな、おおいぬ座の散開星団NGC2362を見ました。
高度がまだ低いことと透明度が良くないためにイマイチでした。
最後は、しし座の銀河NGC2903で締めくくり。
透明度がすぐれずしょぼい姿でしたが、久々に星を見ることができ、満足した夜でした。


2010年02月10日

●「ひな展」開催中!

私が勤務している揖斐川歴史民俗資料館では、常設展の他に企画展を随時、開催しています。
2月9日(火)から3月7日(日)までは、ひな祭りにちなんで「ひな展」を開催中です。

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展示室正面に豪華な七段飾りを配し、展示室内には享保年間に製作されたと思われる江戸期雛や、細面でいかにも雅な面立ちの明治雛、木目込み雛、土雛、市松人形などを展示しています。
また、ひな祭りにふさわしい絵画や掛け軸なども展示、華やかな雰囲気を醸し出しています。
優しい顔立ちのひな人形をご覧いただいて、一足先に春を感じていただければと思います。
機会があればぜひご観覧下さい。

写真:江戸期雛

■揖斐川歴史民俗資料館
岐阜県揖斐郡揖斐川町上南方901番地5
電話:0585-22-5373
休館日:毎週月曜日 2月12日(金)

2010年02月12日

●強烈刺激!初めてのアルバイト

春休みが近くなると、高校生のときの初めてのアルバイトを思い出します。
一眼レフカメラと、当時流行った短焦点反射望遠鏡を買うためのアルバイトです。

同じ天文同好会のS君と応募したアルバイト先は、近くのクリーニング工場でした。
時給はめちゃくちゃ安かったのですが、当時は今ほどアルバイト先がなく、100人規模でアルバイトを採用するその工場はけっこう人気でした。
アルバイト初日、私たち学生は広い部屋に集められました。
ひととおりの説明が終わると、工場の責任者が、並んでいる学生の間を歩きながら部署割を行います。
どうやら体格を見ながら部署割をしているらしく、身体が大きく頑強そうな学生から順にどこかへ連れ去られていくようです。
となりに座っていた学生が「丈夫そうなヤツから順に辛い部署に配属されるらしいぜ」と囁くのを聞いた私とS君は、できるだけ身体を小さく見せるように縮こまっていました。
最後に残ったのは、私とS君を含めた数名。
縮こまっている私たちをいかにも胡散臭げな目で見た工場の責任者は「君たちはタオルだな」そう言って、担当の社員に私たちを預けました。
「タオルはラクらしいぜ。ラッキーだな」
学生の一人が嬉々として先頭に立って歩いていきます。

「タオル」とは、クリーニングが終わった主として病院用のタオルやシーツを畳む部署でした。
社員はおばちゃんばかり、おしゃべりをしながらいかにも楽そうな職場です。
タオルや寝巻き、シーツを畳むコツもすぐに覚え、こりゃいいぜ、と思ったのも束の間。
畳み終えたタオルを金属製のカゴに入れようとした私の指先に、バシッという音とともに激痛が走りました。
静電気です。乾燥しきった衣類と金属のカゴの間に静電気が発生するのです。
それからはひたすら静電気との闘いとなりました。
おばちゃんたちは慣れているようすですが、私たちアルバイトはたまりません。
軽労働には違いないものの、一日中、静電気の痛みに苛まれる辛さはほとんど拷問です。
カゴに触れるたび、私たちは「あうっ!」とか「おうっ!」とか叫びながら、責め苦の時間を過ごすことになりました。

他の部署では、濡れて重くなった洗濯物をいっぱいに詰めこんだ袋を、屈強な学生たちがヒーヒー言いながら運ばされています。
私たちは一日中、電気ショックの拷問。
働いておカネを貰うというのはかくも辛いことなのだなあと、しみじみ思いました。

で、何とか勤め上げ、ようやく購入した一眼レフカメラと100mmF6の反射赤道儀は、その後何年間も大切な愛機となり、天文雑誌に何度も写真を入選させてくれました。
その後もいろいろなアルバイトをしましたが、苛烈な電気ショックに耐えた初めてのアルバイトは、強烈な経験として今でも鮮やかに思い出すことができるのです。

2010年02月14日

●またまた炭素星、かに座Xを見る

昨夜は、0gawa嬢と久々に藤橋に星見に行きました。
昼間は雲が多かったのですが藤橋は晴れ。

炭素星がマイブームの二人、昨夜はまた新たな炭素星を観望しました。
その星は、かに座Xといいます。
2000光年彼方にあり、変光周期は180日で、周期的な変光と不規則な変光が混在している半規則星に分類されています。
スペクトルタイプはC5,4ですから、クリムゾンスターと同じく全天で最も赤い星のひとつです。
私の15cm双眼鏡とogawa嬢のルイ(25cm反射)で見比べると、他の炭素星もそうなのですが、やはりルイで見る方が赤く見えます。
色収差の関係なのか、集光力の違いなのか、15cm双眼鏡ではややオレンジがかった感じ。同じ炭素星ながら、私にはクリムゾンスターの方が赤味が強く感じられました。
プレセペの近くの探しやすい位置でした。

その他は、クリムゾンスター、W-Ori、M1、M78、M35、NGC2158、M46、M47、M41、NGC2362、バラ星雲、NGC2903、リゲルの伴星などを見ました。
圧巻だったのはルイで見たM42。
暗黒星雲が複雑に絡み合ったさまは、さながらハッブルの画像を見ているようです。
火星はやや遠くなった感じ。
それでも白く輝く北極冠はきれいに見えていました。

気温は高く-1度、ほとんど寒さは感じませんでした。
ひととおり観望が終わった頃、南から張り出してきたうす雲が空を覆ったので観望は終了。
いつもながら、ogawa嬢との星見は不思議なぐらい晴天に恵まれます。

2010年02月16日

●「北の宝石箱」NGC2362

先日、藤橋で星を見た際、おおいぬ座の散開星団NGC2362を観望しました。
おおいぬ座のしっぽ近くにあるタウ星(4.4等)を取り巻くように微星が集まっており、小さいながら非常に美しい星団です。
私は、散開星団の中ではこの星団がいちばん好きで、細かな宝石を散りばめたようなその姿に、何度見てもため息が出てしまいます。
星の数はおよそ60個、眼視等級は10.5等、視直径は8′、距離は約5000光年です。
中心にあるタウ星も星団の一員でO型の青色巨星です。他の星も青色巨星という非常に若い散開星団です。

NGC2362.jpg

私は高校生の頃にこの星団を見つけ、以来、こんな小さな星団の美しさを知っているのは自分ぐらいだろうと、いわば秘密の宝物のように思っていたのですが、どうやらマニアの間では密かな人気があるようで「北の宝石箱」という愛称までつけられているようです。
「北の宝石箱」は、南十字の近くにある「宝石箱星団」に対してつけられた愛称だと思います。
本当に小粒のダイヤモンドを小さな宝石箱に詰めたような星団です。
写真も撮ってありますが、今回は昔のスケッチを掲載しました。
1978年1月27日の日付があるスケッチで、機材は60mm屈折、Er20mmで46倍です。
スケールが小さくてわかりづらいかもしれませんが、当時は東京でも小口径でこれだけ見えたのですね。

おおいぬ座からとも座あたりは冬の天の川に浸っていて、散開星団が大変に多い天域です。
低倍率で流していくと、このNGC2362の他にも美しい星団がたくさん見つかりますので、みなさんも透明度の良い晩に冬の南天を楽しんでみて下さいね。

2010年02月18日

●大野町 治水と井水の歴史展

先日、岐阜県大野町文化財保護協会が主催する「大野町 治水と井水の歴史展」に行ってきました。
展示の内容に興味があったことはもちろんですが、私の勤務する揖斐川歴史民俗資料館所蔵資料をこの展示会のために貸し出しており、どのように展示されているのか見てみたかったというのも大きな理由です。

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ちょうど遊びに来ていたogawa嬢といっしょに見に行きました。
展示されているのは、昔の地図や写真、治水工事の記録、治水に使用されてきた道具や工法の紹介などです。
木曽三川の歴史について二人でいろいろと調べていたところでしたので、洪水のたびに変わってきた昔の河道や度重なる水害のようすなど、興味深く展示を観覧することができました。

熱心に展示を見てくれていると思ったのでしょう、係の方がとても親切に展示を解説してくれます。
治水というどちらかといえば地味なテーマに、ogawa嬢のような若い女の子が関心を示すことが珍しく感心だと思ってくれたから、付きっきりで解説をしてくれたのかもしれません。

揖斐川歴史民俗資料館の資料も上手に展示されていました。
公開天文台やプラネタリウム、また歴史民俗系の博物館を訪れる際、私はいつも一般客として訪れます。
今回も資料を提供している館の担当者とは名乗らずに観覧しました。
その方が特別扱いされずに気楽に観覧できますし、観覧者へどのような対応をしているのかを知ることもできます。
今回の展示会では、とても親切な対応でマルでした。

この展示会は、2月21日(日)まで開催しています。
治水や木曽三川の歴史に興味のある方は観覧されてみてはいかがでしょうか。
展示を解説した立派な冊子も貰えますよ。

場所:大野町総合町民センター2階(岐阜県揖斐郡大野町黒野990 ℡0585-32-1111)
観覧料:無料

2010年02月19日

●茅屋根葺き替え見学会を開催します

私が勤務している揖斐川歴史民俗資料館では、現在、敷地内にある茅葺き民家の屋根を葺き替え中です。
ダムに沈んだ旧徳山村から移築したもので、町指定の文化財にもなっている貴重な民家です。

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この民家の茅葺き工事の見学会を、明日、2月20日(土)に開催します。
茅葺き民家自体が珍しくなっている現在、茅葺き工事の様子を見学できる機会は大変に貴重だと思いますので、興味のある方はぜひご参加下さい。

日時:2月20日(土) 午前11時~・午後2時~の2回(それぞれ1時間程度)
場所:揖斐川歴史民俗資料館(岐阜県揖斐郡揖斐川町上南方901-5)
参加費:無料
申し込み:不要(天候にかかわらず開催します)
※汚れても良い服装でご参加下さい。
※ハイヒール・サンダル等不可。
※駐車場完備。

民家前駐車場で民家の概要、工事の方法や茅葺きに使用する材料・道具の説明を行った後で、足場に上り茅葺き工事の様子を見学します。
私は午前・午後とも進行役でご案内します。

当日、工事見学会に参加いただいた方は、揖斐川歴史民俗資料館内を無料で見学できます。
ちょうど「ひな展」を開催していますので、あわせて観覧されてはいかがでしょうか。

写真:茅を下ろした屋根を内部から見る

2010年02月20日

●冬のアルビレオ

先日は、おおいぬ座の散開星団NGC2362をご紹介しました。
この星団のすぐ北側に、とても美しい二重星があります。
おおいぬ座145G星、またはh3945と呼ばれている星です。
これも、二重星マニアの間では有名な星らしいのですが、私はごく最近、NGC2362を導入しようとしていて見つけました。
主星が4.7等のオレンジ色、伴星が6.5等の水色で、偶然見つけた瞬間「きれいな二重星発見!」と、思わず声をあげてしまいました。
見つけたときも「アルビレオにそっくりだなあ」と思ったのですが、その後調べたところ、「冬のアルビレオ」と呼ばれていることがわかりました。
本家本元のアルビレオよりも暗い分、色がよくわかり、本当に綺麗な二重星です。
色はもちろん、角距離も適度で高度も私の15cm双眼鏡で見るのに無理がない(これは個人的な事情ですが・・・笑)、非の打ち所がないこの星。
このあたりは見ることの多い天域なのに、どうしてこれまで気づかなかったんだろうと不思議に思うほどです。
小口径でも見やすいので、NGC2362とセットでぜひ見ていただきたい天体です。
このあたりは冬の天の川近くで、もともと星が多いところ。
「北の宝石箱」NGC2362、「冬のアルビレオ」145G星が加わって、いっそう華やかな星空を堪能できますよ。

2010年02月22日

●屋根葺き替え見学会、盛況でした

20日(土)は、勤務先の揖斐川歴史民俗資料館敷地内にある茅葺き民家の工事見学会でした。
昨年10月から私が担当している工事で、旧徳山村から移築後23年が過ぎて傷んだ茅屋根の葺き替えを行うにあたり、今ではほとんど見ることができなくなった葺き替え作業の様子を現地で見ていただこうと計画した催しです。

minkakengaku01.JPG

午前と午後、2回開催された見学会には、揖斐川町内外から約80名が参加しました。
はじめに民家の概要を説明し、続いて民家前に特設した屋根の模型に実際に茅を乗せ、葺いた茅を屋根裏まで貫いて縄で固定するための「針」や、重ねた茅を隙間なく押し詰めるための「たたき」、茅を刈り揃える「はさみ」などの道具を使って、茅葺きの作業を実演しました。
その後、足場が組まれた工事現場に上り、実際に作業が進んでいるようすを参加者全員で見学しました。

参加された方は「勉強になった」「珍しい作業を見せてもらった」「懐かしかった」などと感想を述べていました。
工事を担当している私としても、こうして珍しい屋根葺きのようすを多くの方に見ていただき、体験型の生きた展示として工事を位置づけることができました。
文化財の修復工事などは、通常はなかなか見ることのできない細部の造作や伝統的な作業の実際などを一般の方が見ることのできる貴重な機会だと思っています。
学芸員として、今後もこうした工事や修復作業を行う場合には、できるだけたくさんの方に見ていただける機会を作りたいと考えています。

写真:模型を使って作業を実演

2010年02月23日

●街と山で星見修行

20日(土)と21日(日)は、よく晴れましたのでogawa嬢と星を見ていました。
20日は冬型がなかなか解消せず山間部は天気が悪かったため愛知県まで出向き、21日は山間部でも晴れていましたので藤橋まで出かけました。
月齢は上弦。
通常の星見には、けっこう支障をきたす明るい月です。

愛知県内は市街地であることに加えて月明かりで空が明るかったのですが、そこは気合の入っている私たち、15cm双眼鏡と25cmドブソニアン(ルイ)で、近接した重星として有名な「いっかくじゅう座β星」や、炭素星のひとつの「りょうけん座Y星」といった恒星から、星雲・星団まで次々に導入します。
星雲はさすがに心眼で見ないと見えないものが多かったのですが、なかでも厳しいと思ったのはM97(ふくろう星雲)でした。
バックグラウンドとのコントラスト差がほとんどない状態で、いかに25cmとはいえ、導入したogawa嬢の腕前に驚かされました。
かなり天文をやっている人でも、見える人は少ないだろうと思うほどの淡さでした。
しし座のM65・M66も極めて淡く、これもよほどのベテラン天文ファン以外は見えないだろうと思いました。

翌日は、さらに月が明るくなっていましたが、快晴だったので藤橋へ。
半月を過ぎているにもかかわらず、さすがに藤橋、漆黒の夜空にきらめく星の数と鮮鋭さはすばらしいものです。
前日のように心眼を使う必要もなく天体導入はどれも一瞬、空が暗いだけでこれほどラクができるものかと改めて感じ入りました。
それならばと、しし座、ろくぶんぎ座あたりの暗い銀河に望遠鏡を向けました。
いかに藤橋とはいえ半月過ぎの月明があるので、10等より暗い銀河はなかなか厳しいものがあります。
ろくぶんぎ座のNGC3115は9.2等と明るいので簡単に見えましたが、もう少し北にあるNGC3166、NGC3169(それぞれ10.6等・10.5等)は、やはりベテラン以外は見えないだろうという淡さでした。(もちろん、月明がなければ15cm双眼鏡でラクに見えます)

2日間続けて、たまたま市街地と山間地で観望をして思ったのは、「眼と導入技術を鍛えるのなら、あえて空の明るい市街地で、また月明下で星見をしなければいけない」ということでした。
たどる星も見えない空で、バックグラウンドとほとんど変わらない明るさの星雲を見るのは観望というより修行ですが、悪条件である分、確実に技量が向上します。
光害に文句を言っているばかりでなく、悪条件下でも星を見る努力をしなければならないと思わせられた2日間の星見でした。

2010年02月25日

●「お伴を連れている星団」を見る

先日、藤橋で星を見た際、「お伴を連れている星団」を3つ、見ました。
近接して別の星雲・星団が同視野に見える天体です。
有名なところでは、ペルセウス座の二重星団がありますね。
今回、見たのは「お伴を連れている・・・」ですから、ペルセウス座の二重星団のように同じような大きさ・明るさの星団がくっついているのではなく、大きく明るい星団に、小さな星雲・星団が寄り添っている天体です。

まずは、ふたご座のM35。
同一視野にNGC2158という小さな散開星団が見えます。
低倍率では分解しないので星雲か彗星のようです。
よく似ているのが、ぎょしゃ座のM38。
これも小さな散開星団、NGC1907が同じ視野に見えます。
M35のペアよりはやや離れていますが、お伴の方が分解しないでボヤッと見えるのは同じです。
20年以上前に初めて見たとき、一瞬、彗星だと思い、ときめいてしまいました。

もうひとつは、とも座のM46です。
M47と並んでいて、いわば「冬の二重星団」として有名ですが、M46の領域内に小さな惑星状星雲NGC2438が含まれていることは意外に知られていません。
明るさは10等、視直径は1′に満たない小さな天体ですので、空が明るい場所では見えないでしょうし、たとえ見えていても気づかないことが多いのでしょう。
小さいので私の15cm双眼鏡では僅かに恒星と違うことがわかる程度ですが、ogawa嬢のルイでは高倍率をかけると、こと座のリング星雲M57を小さくしたような姿がよくわかりました。
微星がびっしりと群れているM46の中に、シャボン玉のような半透明でふんわりとした星雲が浮かんでいるさまは、けっこうファンタジックな眺めです。
私の15cm双眼鏡はとても明るくて、彗星状天体を見るには絶好ですが、このように小さな星雲・星団を観望する場合には、倍率を変えることができないのでちょっと不便だなと思います。

もうすぐ春。
これら冬の天体は、もうすぐ見えなくなります。
次の満月過ぎ、空の暗い場所で、今回ご紹介した「お伴を連れている星団」をご覧になってみてはいかがでしょうか。

2010年02月28日

●棒と渦巻き・・・銀河の形

私たちは地球に住んでいます。
地球は太陽のまわりを回っていて、太陽は「銀河系(天の川銀河)」という星の大集団に属しています。
こんな銀河系、皆さんはどのような形をしていると考えていますか。
20年ほど前までは、中心核のまわりを星やガスで構成された何本もの腕がとりまいている「渦巻き銀河」だという考え方が主流でした。
アンドロメダ座にあるM31・・・アンドロメダ銀河によく似ている姿だと言われたり、いや、もう少し腕が開いていて、さんかく座にあるM33に似ていると言われたりしてきたのです。

ところが最近、観測が進むにつれて、銀河系は「棒渦巻き銀河」なのではないかという主張が主流になってきました。
「棒渦巻き銀河」とは、中心核から2本の腕が伸びている銀河をいいます。
従来、銀河系には何本かの腕が存在すると言われてきたのですが、最近になって確実に存在するのはそのうちの2本だけなのではないかと修正されてきたのです。

銀河系の形が、渦巻きだろうと棒渦巻きだろうと、私たちの生活には何の関係もありません。
でも、個人的には、銀河系は渦巻き銀河であってほしかったなあとちょっと残念な気持ちでいます。
というのは、子供の頃からずっと、銀河系の姿を大マゼラン雲にある惑星から見てみたいな、と思い続けてきたからです。
大マゼラン雲にある惑星から見ると、銀河系が夜空の3分の1ほどを覆って見えるはずです。
そんな惑星の夜の海辺で、水平線から昇ってくる壮麗な銀河系の姿を見てみたい。
もちろん叶うはずのない夢ですが、想像するたびに今でもワクワクします。
そして、水平線から昇る銀河系の姿は、やはりしっかりと渦を巻いた渦巻き銀河の方が壮麗で雄大です。
棒渦巻きでは、なんとなく迫力と神秘性に欠けるじゃないですか。

とはいえ、仮に銀河系が綺麗な渦巻き銀河だったとしても、美しい姿はあと40億年ほどしか保てません。
銀河系は、30~40億年後には、お隣にあるアンドロメダ銀河と衝突・合体して、腕がなくただ丸いだけの「楕円銀河」に変わってしまうのです。
「楕円銀河」になってしまった銀河系、見たくないなあ。
今の時代に生まれていて良かったかも。