2010年10月19日

●30年ぶりの木星

9月に勤務先で開催した「木星と秋の星座観察会」。
予想外の好天に恵まれ、たくさんの参加者があり好評でした。
この観望会の開催を提唱されたのは、揖斐川町内に住むTさんです。
工作が得意で、現在は木工サークルのメンバーとして揖斐川歴史民俗資料館を利用して下さっていますが、昔は大の天文ファンだったそうです。
私が資料館勤務となり、何かと星の話をする機会が多くなって、天文熱が再燃したらしく、30年前に使用していたという15cm反射望遠鏡を資料館に持参され、ぜひその望遠鏡を使用してたくさんの人に星を見せたいという抱負を語られたのが、今回の観察会開催のきっかけです。

その望遠鏡は、古い天文ファンならご存知の方が多いと思います。
ミザールというメーカーの望遠鏡で「CX-150」といいます。
ああ、あれね。
そう思われたベテラン天文ファンも多いかもしれません。
口径15cm、当時としては初めてのカタディオプトリク式を採用した珍しい望遠鏡です。
補正レンズを使用して、反射望遠鏡の性能を活かしながら欠点を補うという、補正光学系と呼ばれるタイプです。

昔はその望遠鏡を使って、大いに星を見、天体写真も撮っていたTさんですが、その後多忙となり、他に興味が移ったこともあって、ずっと放置してあったそうです。
反射鏡はメッキが剥げかかり、光軸も狂っていましたが、Tさんと二人、できるだけ調整をし直して観望会当日に臨みました。
高齢のTさんは、目の調子が悪いとのことでやや苦労されていましたが、やがて木星を視野にとらえ、参加者に見せ始めました。
往年の知識も披露されます。
木星の大きさ、ガリレオ衛星の話などなど、子どもたちを前に30年前の愛機を操作し、解説をするTさんはとても楽しそうでした。

そう、この望遠鏡が星に向けられたのは、30年ぶりのことなのです。
Tさんも楽しそうでしたが、私は望遠鏡も嬉しかっただろうなと思いながら見ていました。
天体望遠鏡は、そのレンズに星を映してこそ生きる機械です。
「光軸ももう少し追いこまなきゃ。再メッキもしなくちゃなあ」
そう言うTさんの瞳は少年のように輝いていました。
30年ぶりに星を映し出した望遠鏡。
望遠鏡も、それを操作するTさんも、木星の縞や衛星に感嘆の声を上げる参加者も、誰もが嬉しい観望会でした。

冬までには望遠鏡の整備を終えて、また観望会をやりたいとTさんは言っています。
Tさんのためにも、そしてその愛機のためにも、ぜひ冬の澄んだ星空を、みんなでいっしょに見上げる機会を、また作りたいと思っています。