« 「はやぶさ」命名雑学辞典 | メイン | コタツを知らなかっためそめそ »

2010年12月11日

●詩「ピアノソナタ追想」

もはや住む人のない崩れかけたその洋館
誰が手入れをしているのか四季の花が絶えることがない

少年の僕は
花に惹かれるようにその門をくぐったことがある

5月の日ざしが
擦り減った石畳に白く映えて
花に囲まれた小径は低いテラスへと続く

ピアノの音に気づいたのは門をくぐって間もなく
明晰なその音は
天井の落ちたリビングルームから聴こえるらしかった

やがてたどり着いた
午後の日ざしがいっぱいに降り注ぐ部屋の中央
磨き上げられたグランドピアノが置いてあり
ピアノに向う黒いドレスの後ろ姿
豊かに流れるブロンドの髪
無心に鍵盤を叩くその指先はしかし
洗われたような白い骨ばかりとなっていて
長い髪を透かして見る横顔も完全に白骨化しており
それでも彼女は
僕に気づくことなく古いソナタを弾き続け
ピアノと彼女の周囲
色とりどりに大輪のバラが咲き乱れ・・・

今もときどき
彼女を思い出すことがある
初夏の大気に溶けるピアノソナタの音色
彼女を飾っていたバラの花弁のあでやかさ

☆久々に訳のわからない詩などを・・・。
作ったのはもうずいぶん以前のことです。
もちろん、実際にこんな体験をしたわけではありません。
でも、白骨化した(元はかなり美人だったであろう)女性が、恐らく自らが既に死んでしまっていることすら知らぬままに、バラの花に彩られる崩落した洋館で、無心にピアノを弾いている・・・
そんな情景がとても美しいものに思えて、この作品を書いたわけです。
実際に、こんな場面に遭遇したら僕はどうするでしょうか。
きっと時の経過も忘れて、彼女の弾くピアノの音に、何時間も、いえ、何日も何年間も、聞きほれてしまうかもしれません。

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://at-h.net/~has/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/872

コメントする

(初めてのコメントの時は、コメントが表示されるためにこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまでコメントは表示されませんのでしばらくお待ちください)