●第1訓「ディレクターも編集者もみんな素人さ!」
「せわしない都会を離れて田舎でのんびり暮らしたいよ」
「都会の人は冷たいけど、田舎には人情が残っている」
「自然に囲まれた暮らしに憧れるなあ」
満員電車に揉まれながら、あるいは残業に追いまくられながら、こんなことを考えている人は多いのではないでしょうか。
いったんそう思い始めると、あちこちで田舎暮らしに関する情報が流れていることに気がつきます。
テレビを見れば、月10万円以下で暮らせる田舎が紹介され、アウトドア雑誌では、髭を生やした脱サラのペンションオーナーが自然の素晴らしさについて得々と話しています。
おお、やはり田舎暮らしは最高だ。コンクリートジャングルの都会なんかじゃなく、青空と緑に囲まれた山村こそが俺の居場なんだあ!
そんな昂ぶる思いを抑えきれずにいるアナタのために、テレビや雑誌が教えてくれない田舎暮らしのノウハウをお教えしたいと思います。
で、いきなり夢を壊すようで恐縮ですが、表題の第1訓です。
「テレビや雑誌が伝える田舎暮らしの半分以上は真実ではない」
このことをまず肝に銘じておいて下さい。
もちろん、メディアの報道が嘘というわけではありません。ただ、視聴率を稼ぎたいし本は売りたいしで、どうしてもメディアは、田舎暮らしの良い面だけを取り上げがちです。
たとえば「一ヶ月10万円以下で豊かな暮らしができる」云々の番組ですが、田舎でなくとも、月10万円以下で生活することはできます。逆に、東京の方がそうした暮らしはしやすいかもしれません。
田舎では、持ち家以外の住居を探すのは非常に困難です。しかし、条件さえ問わなければ、月2万円台の家賃で住めるアパートは東京都内にいくらでもあります。
食料品や服は、田舎でも東京でもほぼ同じ価格ですし(東京の方が競争相手が多いだけ安いかもしれません)、東京では車がなくても暮らせますが、田舎では車は必需品です。それも、普通の暮らしをしようと思えば、一人一台は常識です。ガソリン代や車検、税金だけで、東京暮らしよりよほどかかってしまいます。
自分で畑や田んぼを作っていようが鳥や牛を飼っていようが、そこから得られる食料だけで生きていけるわけではありません。服だって、人並みなものを着ていなければ、それこそ「アブナイ人」と勘ちがいされてしまいます。
「田舎だから10万円以下で暮らせる」わけではなく、人並み以下に生活レベルを抑えれば、場所を問わず「生きていくことはできる」のです。
「でも、テレビを見てると、近所の人から野菜を貰ったりして貧乏でも豊かに暮らしてるよ」と言われるかもしれません。
しかし、近所の人に野菜を貰えるようになるには、目に見えない相応の対価を払っています。いわゆる「ご近所付き合い」というヤツですね。
都会のご近所付き合いは、たまに顔をあわせたときに世間話でもしていれば済みますが、田舎ではそうはいきません。
班の仕事や各種世話役をこなし、さらには消防団への入団や一斉清掃への参加など、地域の団体や行事にそれなりの参加・貢献をしなければ、まともな近所付き合いはできないのです。
どこまでも都会の生活習慣を捨てきれないペンションのオーナーが、やがて地域から排斥されて廃業せざるを得なくなったという、笑えない話もあります。
テレビや雑誌から情報を収集することが悪いとはいいませんが、そうした企画を考えるディレクターや編集者のほとんどは、視聴者や読者と同じ、田舎に憧れる都会生活者としての視点のみで田舎の実態を捉えているという事実を知っておく必要はあるのではないかと思います。
(写真は、揖斐川町藤橋の集落遠望)
