●藤の吊り橋
揖斐川町役場藤橋振興事務所のすぐ横に、東西横山集落を結ぶ橋がかかっています。
今でこそコンクリートの橋ですが、明治二十五年に木橋に架け替えられるまでは、藤の蔓を編んで作
られた橋がかかっていました。旧藤橋村の村名の起源となった吊橋です。
安部晴明が架橋を指示したとも言われ、正保二年(一六四五)の美濃国絵図にも描かれていることから、近世を通じて架け続けられてきたことは確かなようです。
橋は、山から切り出した白口藤の大蔓を、両岸に植えた大木に結びつけて架けられていました。
それだけの強度と長さを持った材料を調達するだけでも大変でしたし、何の手がかりもない渓谷を挟んで藤蔓を結ぶのも非常に危険な作業でした。
橋の長さは約三十間、幅は四尺、揺れる橋の上から見下ろせば、逆巻く急流に目がくらみそうだったそうです。それでも村人は、重い荷を背負って平気で渡っていたとのことでした。
今、緑の香りに包まれた橋を渡れば、揖斐の川面はあくまで青く、揺れる吊橋を歩いた当時の旅人と心が重なってゆくようです。藤の花が川面を紫に染める初夏が、晴明ゆかりの藤の吊橋跡の白眉です。
