●基本は星像の美しさ
旧藤橋村へ移住したのが平成4年6月。それ以来、教育委員会事務局で勤務していた3年間を除いて、すでに10年以上、プラネタリウムの解説を生業にしていることになります。
藤橋城(西美濃プラネタリウム)は、ドーム径9.2メートル、座席数86席、投映機はミノルタのMS-8です。
といっても、最新鋭の大型機しか見たことのない方にとっては、MS-8という投映機、ご存知ないかもしれません。10メートル以下ドーム用のツアイスタイプ、操作はすべて手動という機械です。
最近は、こうした小型機でもデジタル化が進み、地球から見た星空だけでなく任意の天体から見た星空を投映できたりと、さまざまな機能を持つ機械も増えてきていますが、MS-8は、レンズを使って恒星原版に穿たれた星を映し出す、本当に古典的なフルマニュアル機となっています。
「そんな古めかしい投映機じゃ、もう時代遅れじゃないの」なんて思わないで下さい。
実は、このタイプの投映機が映し出す星像は、デジタル機に比べて何倍も優れているのです。
デジタル機も長足の進歩を遂げてはいますが、大型館用の高価な投映機でも、その星像はぼってりと大きく、本物の星空とは比べるまでもない貧弱さです。
14年前、採用試験に合格し、初めて当館のプラネタリウム投映を見学したとき、私はその星像の臨場感に本当に感激しました。
もちろん、当時、解説を担当されていた小栗さんのすばらしいナレーションや機器操作も感激に一役買っていたことは間違いありませんが、長年星空を見つめてきた私を瞠目させるに足る星像であったことは間違いありません。
以来14年、あちこちのプラネタリウムを見てきましたが、メガスターを除いては、ウチの館に優る星像を映していた館はなかったような気がします。ですから、今でも私は、レンズ式の古典的な投映機が大好きです。
プラネタリウムの基本は、派手な演出でもなく、ましてや人気アニメのキャラを使った人気取り映画でもない、星像の美しさであると信じているからです。
最近でこそ、家庭用プラネタリウムの爆発的なヒットなどによって、プラネタリウムの人気は回復傾向にありますが、基本的にはその入館者数は長期低落傾向をたどってきました。
一部のプラネタリウム関係者は、そうした傾向に危機感を抱き、派手で奇抜な映像と大音響を駆使した番組を作り、入館者をひきつけようとしています。もちろんこうした傾向には、フルマニュアル機を自在に操作できる熟練解説者が非常に少ないこと、大がかりで高価な投映機と番組を売りこみたいというメーカーの戦略も大いに絡んでいるのですが、はたして入館者の皆さんは、ゲームのような派手派手しさをプラネタリウムに望んでいるのでしょうか。
心安らげる静かな時間と空間を望む方が、本当は多いのではないでしょうか。
もう一度、入館者のニーズと投映機の基本性能に立ち返って、プラネタリウムを考え直すことが必要ではないかと思います。
